今から婚約破棄直後の悪役令嬢が通ります。ご注意ください。

「ねえ……どうして、私が良いの? 理解が出来ないわ。私は夜会の最中に婚約破棄をされて、名誉は地に落ちたのよ。国王陛下は名誉回復を約束してくれたけれど、過去されたことは消えない。私と結婚して、貴方には得なことなんて……」

 いわば、私は地に落とされた硝子の器なのだ。一度、大きく割れているけれど上手く補修してそれなりには見える。

 けれど、割れた過去は消えずに、元通りに戻ることは決してない。

「ああ……お忘れかもしれませんが、王太子と婚約できるという事は、ベロニカ様にはそれだけの魅力があるということですよ。貴族令嬢としても女性としても、それを無碍に扱った馬鹿は、あのように懲らしめました……他に何か必要ですか?」

 立ち上がったクラウスは近づいたので、私は一歩後ずさった。

「もう一度聞きます。僕と結婚してくれませんか」

「……いいえ。私は婚約破棄されたばかり。貴方にはもっと良い方が……」

「もしかしたら、お忘れかも知れないのですが、僕は嘘をついたことがわかるんですよ。ベロニカ様。本当は僕と結婚したいんですね?」