今から婚約破棄直後の悪役令嬢が通ります。ご注意ください。

 高い悲鳴のような耳障りな叫びが聞こえて、ため息をついた私は窓のカーテンを閉めた。より大きく騒ぐ声が聞こえ、やがて遠ざかったので、門の外へと出されたのだろう。

 私へ虚偽の罪で婚約破棄したことを謝罪に来た王太子エドガルド殿下を、父であるシュターデ公爵は、『お前の好きにしても良い』と見て見ぬ振りだ。国王陛下の命を受けたのだろう。

 王族だからと気にすることもない。私は当分、許す気はないと伝えた。

 邸に仕える使用人たちは、私の意に従って、王太子殿下を追い出したようだ。

「……いかがですが。ベロニカ様お気に召しましたか。約束通り、王太子をこらしめて差し上げましたが」

 応接室のソファに長い足を組んで、優雅にお茶を飲む騎士クラウス・グリムヴァルト。

 信じられないけれど、私からの注文『王太子を懲らしめること』を彼は見事に実行してのけた。

 私もそんなクラウスとの約束を守り、話の続きをしているというわけ……これで、エドガルド殿下側であるという疑念は完全に晴れたわけだから。

「本当に驚いたわ。私の言葉をまさか、実行してくれるなんて」