今から婚約破棄直後の悪役令嬢が通ります。ご注意ください。

「クラウス。私への用は、それだけかしら……失礼するわ。とにかく、今は邸へと帰りたいの。そういった気持ちは、今夜何があったかを知っている貴方なら、きっとわかってくださると思うけど」

 ここまで言ったなら、引き留められはしないだろう。私の言葉に軽く頷き、クラウスは微笑んだ。

「それでは、後日にもう一度僕のお話を聞いていただく代わりに、僕に何かできることはありますか」

 私はここで、彼には絶対に不可能なことを言えば良いのだわと考えた。

 王太子に婚約破棄されたばかりの私にわざわざ話し掛けて来て、ましてや結婚したいだなんて、怪しい人物過ぎるわ。出来ればこの先、あまり関わりたいとは思えない。

 クラウスが珍しいくらいの美男だとしても、それはより一層、怪しさを増すだけの材料だもの。

「……あの偉そうな王太子を懲らしめてくれるならば、クラウスの話をまた聞いても構わないわ」

 私の無茶な注文を聞いたクラウスは、黙ったままで胸に手を当てて頭を下げた。

 もし、彼がエドモンドやソフィアの命を受けて私を騙すつもりで来ているのなら、これは絶対に実行出来ない。