『男装歌い手、はじめました。~弟を養うためのヒミツの男装、大人気歌い手グループ『Canvas』の先輩たちにバレちゃいそうです!~』

だけど、現実の壁は厚い。

中学生ができるバイトなんて限られている。

時給数百円のチラシ配りじゃ、家賃と律の保育園代、そして毎日のご飯代を払うだけで精一杯。

貯金は、もう底を突きかけていた。

(中学生のバイトじゃ、律をまともに育てられない。……なら、これしかないんだ)

私は部屋の隅にある、中古で買った安いマイクとパソコンを見つめた。

私の唯一の武器。

それは、昔から「男の子みたい」と言われてきた、この低い声。

歌うことが大好きだった。だから、ネットの世界に賭けてみようと思った。