『男装歌い手、はじめました。~弟を養うためのヒミツの男装、大人気歌い手グループ『Canvas』の先輩たちにバレちゃいそうです!~』

「ねえ、ねえちゃん。おなか、すいた……」

小さな小さな、たった4歳の手が、私のズボンの裾をぎゅっと握りしめる。

ツギハギだらけの古いアパート。

冷え切った部屋の中で、弟の律(りつ)は今にも泣き出しそうな顔で私を見上げていた。


「ごめんね、律。今、あったかいスープ作るからね」

私は無理やり笑顔を作って、律のサラサラな髪を撫でる。

半年前、大好きな両親が交通事故で突然亡くなった。

残されたのは、中学2年生の私と、幼い弟の律だけ。

親戚の家をたらい回しにされそうになったけれど、「律と離れるなんて絶対に嫌だ」と泣き叫んで、なんとか二人きりで暮らし始めた。