うちの社食はうまいと思う。
営業で他の会社に行って、社食を利用させてもらったこともあるが、この日替わり定食や季節の定食は中で手作りされているせいか、同じメニューでも段違いにうまい。
その割に、値段も抑えられている。特に、ひと月分を給料天引きにすると二割引きになったりする。
そういったところはさすがに食品関係の会社だけのことはある。
本社に来てからはすっかりここで食べるようになった。
「なあ、柊」
「なんだ?」
隣の小林は同期で他の営業部の課長だ。こいつはとにかくたくさん食べる。定食だけでは足りず、毎日パンも買っている。
今日も定食がすでに空で、メロンパンをデザート代わりに食べ始めていた。
「あの、斜め前にいる女子、お前のこと見てるような気がするんだ。おとといも見てた気がする」
「放っておけ」
「……いや、ほらお前がモテるのはわかっているけど、そういう感じじゃないような気がする。それにあの子見たことがあるような……お前の営業部の所属だよな?結構可愛いから入社した時噂になってた」
俺はそう言われて初めて斜め前に目線を向けた。目が合った、だがすぐに目を反らして下を向いて食べている。あれは……紺野だ。
「……確かにうちの女子社員、紺野だ」
「ああ、紺野さん。そう、彼女電話の応対が優しい。期限切れの申請も嫌みひとつ言われたことがない。前の人、きつかったからな」
「前の人……産休に入った野口さんか……」
「いや、よく沢田部長はあんなきつい人と結婚したよな。驚きだよ。俺なら絶対紺野さんを選ぶ」
「……選ばなくていい」
「は?」
「彼女は沢田さんの代わりに俺のアシスタントをしている。手を出すなよ。不器用なタイプだから心配だ」



