誕生日ケーキ作戦は功を奏し、ほぼ毎月彼がケーキを食べるところを見ることができるようになった。
相変わらず美しい食べ方。私は大満足だった。
翌月、課長は出張で三日間いなかった。
私は社食で久しぶりに他の人の食べ方を観察した。課長に次ぐ、第二位の推しを見つけるチャンスだ。
彼がいるときは、他の人を見る余裕がない。今日しかない。
「留美、あの三列前の左から二番目の人、知ってる?」
留美は生姜焼きを口にいれたまま、じいっとその人を見た。
「薄ピンクのワイシャツの人?」
「そう、そう……」
「あの人はうちの山田君。一個下だけど、かっこいいよね。モテるんだよ、知らなかったの?」
「顔はどうでもいい。食べ方が綺麗」
課長ほどではないが、第二位に推薦してもいい。
「……はー、夏奈。またそれ?今日くらい、落ち着いて食べたらどうなのよ」
「課長がいない日は保険をかけないとね。断然課長が一位だけど、うーん……」
課長が帰って来て、また社食で課長が食べているのを見た。
やっぱり課長が一番だ。顔も食べ方もピカイチ。山田君はスプーンの食べ方がいまいち。
だから、その茶碗蒸し、ほっぺたについちゃうんだよ。盛りすぎなんだよね。箸の食べ方は綺麗なのに惜しい!
山田君の方を見ていたら、山田君がこちらに手を振った。ええー?!
びっくりして、課長に視線を戻した。え?!今度は課長が難しい顔をして私をじいっと見てる。どうして?
すると、立ち上がった課長がまっすぐこちらに歩いてきた。うわ、どうしよう。ばれた?
「紺野」
「は、はい」
「昼休み終わったら、打ち合わせ室へ来るように」



