8
麻薬畑は火の海と修羅場の有様だった。
「いったい何なんだ、あいつは!」
「戦時中の希少タイプですよ、きっと! 動きとか、絶対エースパイロットとかのデータでしょ? あんなもん、どうしろって!」
とっくにキャンサーが七機も破壊されていた。迂闊に防衛に出たことで、かえって反撃・進撃を誘発したようで、交戦場所は居住エリアに近づいている。より小型の四足戦車やミサイル付きのヘリも動員されているが、いっこうに歯が立たない。
飛来するミサイルを腕の一振りで払いのけてたたき落としてしまう。密度が高く、それ自体が強力な鈍器のようなものなのかもしれなかった。外装が簡易であるかわり、骨格フレームが強固に出来ているらしい。
脅威の野良RW(ロボットウォーカー)、つまりカプリコンは胸部の両脇にある銃口を露出させる。
「は? 誤動作か? どうせ弾切れじゃ」
戦時中のRWなら、たとえ機銃を積んでいたとしても、しばしば弾が切れている。だが全自動の無人基地で補給している場合もあるために、油断は出来ない。
悪い予感は的中したようだった。
予想したより、もっと悪かった。
連射されたのは小口径のビームで、周りを包囲している戦車やヘリを片っ端から破壊や撃墜していく。まだキャンサーのような中型以上のRWならば幾らか耐えたかもしれないが、小型では一発で中破や戦闘不能になる。
しかも撃ちまくった熱線がコカ畑に引火して燃え広がり、順当に売れば相当な価値があった商品栽培に大損害を与えていく。
「なんだってんだ! 畜生め! 戦車とヘリを下がらせろ! キャンサーも距離をとれ! このままじゃ被害が増えるだけだ!」
ゲリラたちは悲鳴をあげる。兵器だってタダではない。青天の霹靂で、振って湧いた災害のようなものだった。自分たちの悪行ビジネスを棚上げして、被害と今後の対処に理不尽な不安を抱く。
カプリコンが熱線レーザーをさらに一連射する。今度は明らかに、コカ栽培の麻薬畑を狙って燃やしている。どうやら「有害物質」とでも思っているのだろう。
報告を受けたこのゲリラ村の指揮者たちは、近隣のより大きな拠点から緊急応援を呼ぶことに決めた。不本意で不面目、しかも出動費の謝礼もかかるが、このままではどうにもならなかった。
9
「そうだ! 大至急で頼む!」
大型アンテナのある通信施設から、近隣の武装ゲリラ拠点に応援要請がなされる。
そのとき、すぐ近くで機銃掃射の銃声と撃ち合いの喧噪が聞こえた。窓の外を見れば、警備用の小型RW・カンガルーが歩哨の兵士たちに鉄火の雨を浴びせかけている。
たとえ五メートルそこそこではあっても、人間が持ち運べる銃火器よりは強力なものを搭載している。装弾数や連射性能も同様で、機関銃を装備した装甲車に人間ではなかなか太刀打ち出来ないのと同じことだ。
せめてロケットバズーカでもあればどうにかなったかもしれないけれども、武器庫に取りにいかない限り、すぐには用意出来ない。通信施設はゲリラ村でも安全な場所にあるから、それほど厳重には警戒していない。しかもロボットウォーカーの多くは、今回の「巨人」騒動での対応に駆り出されている。
あれよあれよという間に、「動く者全て皆殺しにする」勢いであった。おそらくコンピュータのオールキル設定を使い、生体反応探知で「全て撃つ」やり方だろう。通常ならば味方エリアでは危なくて使えないし、専門の知識がなければ設定変更すらできない。
ややあって、銃声が止み、一拍の静寂の後で壁が外から叩き壊される。体当たりしているのだ。崩れた石と土の壁が土煙をあげる。
霞んだ視界を手で拭いながら頭を上げると、カンガルーの露天コックピットから、人影が立ち上がっている。手にアサルトライフルを構えている。
(あの女!)
州軍閥のマリア・リーだった!
銃で応戦しようとしても間に合わず。瞬く間にその場の四名は射殺されていた。通信設備を破壊しないために、内部制圧には大口径の機関銃を使うのを流石に避けたらしい。
「生体反応ゼロ!」
副操縦席からサユキ・サトーが叫び知らせると、マリア・リーは飛び降りて、通信設備のコンソールに飛びついた。
麻薬畑は火の海と修羅場の有様だった。
「いったい何なんだ、あいつは!」
「戦時中の希少タイプですよ、きっと! 動きとか、絶対エースパイロットとかのデータでしょ? あんなもん、どうしろって!」
とっくにキャンサーが七機も破壊されていた。迂闊に防衛に出たことで、かえって反撃・進撃を誘発したようで、交戦場所は居住エリアに近づいている。より小型の四足戦車やミサイル付きのヘリも動員されているが、いっこうに歯が立たない。
飛来するミサイルを腕の一振りで払いのけてたたき落としてしまう。密度が高く、それ自体が強力な鈍器のようなものなのかもしれなかった。外装が簡易であるかわり、骨格フレームが強固に出来ているらしい。
脅威の野良RW(ロボットウォーカー)、つまりカプリコンは胸部の両脇にある銃口を露出させる。
「は? 誤動作か? どうせ弾切れじゃ」
戦時中のRWなら、たとえ機銃を積んでいたとしても、しばしば弾が切れている。だが全自動の無人基地で補給している場合もあるために、油断は出来ない。
悪い予感は的中したようだった。
予想したより、もっと悪かった。
連射されたのは小口径のビームで、周りを包囲している戦車やヘリを片っ端から破壊や撃墜していく。まだキャンサーのような中型以上のRWならば幾らか耐えたかもしれないが、小型では一発で中破や戦闘不能になる。
しかも撃ちまくった熱線がコカ畑に引火して燃え広がり、順当に売れば相当な価値があった商品栽培に大損害を与えていく。
「なんだってんだ! 畜生め! 戦車とヘリを下がらせろ! キャンサーも距離をとれ! このままじゃ被害が増えるだけだ!」
ゲリラたちは悲鳴をあげる。兵器だってタダではない。青天の霹靂で、振って湧いた災害のようなものだった。自分たちの悪行ビジネスを棚上げして、被害と今後の対処に理不尽な不安を抱く。
カプリコンが熱線レーザーをさらに一連射する。今度は明らかに、コカ栽培の麻薬畑を狙って燃やしている。どうやら「有害物質」とでも思っているのだろう。
報告を受けたこのゲリラ村の指揮者たちは、近隣のより大きな拠点から緊急応援を呼ぶことに決めた。不本意で不面目、しかも出動費の謝礼もかかるが、このままではどうにもならなかった。
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「そうだ! 大至急で頼む!」
大型アンテナのある通信施設から、近隣の武装ゲリラ拠点に応援要請がなされる。
そのとき、すぐ近くで機銃掃射の銃声と撃ち合いの喧噪が聞こえた。窓の外を見れば、警備用の小型RW・カンガルーが歩哨の兵士たちに鉄火の雨を浴びせかけている。
たとえ五メートルそこそこではあっても、人間が持ち運べる銃火器よりは強力なものを搭載している。装弾数や連射性能も同様で、機関銃を装備した装甲車に人間ではなかなか太刀打ち出来ないのと同じことだ。
せめてロケットバズーカでもあればどうにかなったかもしれないけれども、武器庫に取りにいかない限り、すぐには用意出来ない。通信施設はゲリラ村でも安全な場所にあるから、それほど厳重には警戒していない。しかもロボットウォーカーの多くは、今回の「巨人」騒動での対応に駆り出されている。
あれよあれよという間に、「動く者全て皆殺しにする」勢いであった。おそらくコンピュータのオールキル設定を使い、生体反応探知で「全て撃つ」やり方だろう。通常ならば味方エリアでは危なくて使えないし、専門の知識がなければ設定変更すらできない。
ややあって、銃声が止み、一拍の静寂の後で壁が外から叩き壊される。体当たりしているのだ。崩れた石と土の壁が土煙をあげる。
霞んだ視界を手で拭いながら頭を上げると、カンガルーの露天コックピットから、人影が立ち上がっている。手にアサルトライフルを構えている。
(あの女!)
州軍閥のマリア・リーだった!
銃で応戦しようとしても間に合わず。瞬く間にその場の四名は射殺されていた。通信設備を破壊しないために、内部制圧には大口径の機関銃を使うのを流石に避けたらしい。
「生体反応ゼロ!」
副操縦席からサユキ・サトーが叫び知らせると、マリア・リーは飛び降りて、通信設備のコンソールに飛びついた。



