雨が降る日はジャスバーへ ――歌姫の告白――

「菫さん? 菫さんだよね! ずっと会いたかった」

 今会ったら、冷静に判断出来なくなる「人違いです」そう言って立ち去ろうとしたが、腕をしっかり捕まれる。

「菫さん行かないで」

 無視をして、前に進もうとしたら、手を強く引っ張り、ギュッと抱きしめられる。抵抗していた力が抜けて、立ち尽くすことしか出来なかった。

「今言う事は本意じゃないけど、好きだよ。人生を一緒に歩んで欲しい」

 胸が苦しい。痛い。辛い。逃げ出したい。
 
 涙をグッと堪えて突き飛ばす。
「ごめんない。貴方とは付き合えない」

 この瞬間。私は恋より、譲れない夢を選んだ。

 最初から決まっていたのかも知れない。でも、言葉にして手放すのが怖かった。

 貴方のそばに居ると、いつも夢のように感じる。でも、叶えたい夢には近づけない。同じ夢だけど、恋よりプライドを選んだ。

「さよなら」

 呆然と立ち尽くす、彼の横を通り過ぎる。
 
 この決断をしたからには、進む以外の道はなくなった。
 
 振り向かずにトンネルを出た。