雨が降る日はジャスバーへ ――歌姫の告白――

「好きな女性が出来たら作ってあげて」

 少しトゲのある言い方かも知れない。でも私にとっては、意味のあるお酒だから期待を込めて言った。
 
 ヴァイオレットフィズのカクテル言葉は、私を覚えていてと言う意味。

 このお酒を作るとき、スミレのリキュールを入れる。これは、パルフェタムールと言って、意味は完全なる愛。
 
 この一ヶ月で、レンに対する思いは、興味から恋心に変わった。

「私からも質問。何でステージに立つ時、マイクを持つ手が震えているの」

 困った顔で沈黙をすると、覚悟を決めたように話す。

「怖いんだ。一人でステージに立つの。でも、歌は自分の力だけで表現したい」

 私は、フゥーと息を吐いて肩の身が降りた。

「何ーだ。そんな事か、もう大丈夫」
 
 手に付けている、銀色のバングルを外してレンの細長い綺麗な手に付けた「一人が怖いとき、このバングルを思い出して。貴方は一人じゃないから」

 安心した顔をするとバングルを嬉しそうに見つめていた。

「ライブの時は必ずつけるよ! 凄く嬉しい」

 その後は、手料理とお酒を朝まで楽しみ、薄明(はくめい)の空になった頃に帰っていた。