「こんなの平気です。それより、早く大翔
のところへ行ってあげてください」
「……でも」
「わたしのことなんていいから、早く大翔
のところへ!!」
語気を強めるとお父さんが戸惑ったように
見つめる。わたしに出来ることは、もうない。
ここから先は、お父さんに大翔の運命を託す
しかない。その想いに強いまなざしを向ける
と、お父さんはそっと手を剥がして、わたし
に白いハンカチを握らせた。
「大丈夫、必ず助ける」
そう口にすると、すっと立ち上がり、踵を
返す。走り出したお父さんの背中が見えなく
なるのはあっという間で、わたしは夢でも見
ていたかのようにしばらく呆けてしまった。
雅楽の音色も人々の声もどこか遠くに聞こ
えて、現世と常世のはざまを漂っているよう
な感覚に空を見上げる。ぺたんと座り込んで
空を見ているわたしに、男の子たちが怪訝な
顔を向け、横を通り過ぎる。
――そういえば、さっき。
ふと、いっくんの声が聞こえたことを思い
出し、辺りを見回す。声と共に灯篭を指さし
た手は、子どものものだったか、大人のもの
だったかわからない。でも、あの声はいっく
んだった。子どもの頃からずっと聞いていた
わたしが聞き間違えるはずが、ない。
もしかして大翔を助けてくれたの?
いまもどこかで見ていてくれてる?
「……いっくん、いるの?」
名前を呼んでも、返ってくる声はなかった。
けれど、緩く吹き抜けた風がやさしく頬を
撫でてくれて、わたしはわずかに目を細めた。
のところへ行ってあげてください」
「……でも」
「わたしのことなんていいから、早く大翔
のところへ!!」
語気を強めるとお父さんが戸惑ったように
見つめる。わたしに出来ることは、もうない。
ここから先は、お父さんに大翔の運命を託す
しかない。その想いに強いまなざしを向ける
と、お父さんはそっと手を剥がして、わたし
に白いハンカチを握らせた。
「大丈夫、必ず助ける」
そう口にすると、すっと立ち上がり、踵を
返す。走り出したお父さんの背中が見えなく
なるのはあっという間で、わたしは夢でも見
ていたかのようにしばらく呆けてしまった。
雅楽の音色も人々の声もどこか遠くに聞こ
えて、現世と常世のはざまを漂っているよう
な感覚に空を見上げる。ぺたんと座り込んで
空を見ているわたしに、男の子たちが怪訝な
顔を向け、横を通り過ぎる。
――そういえば、さっき。
ふと、いっくんの声が聞こえたことを思い
出し、辺りを見回す。声と共に灯篭を指さし
た手は、子どものものだったか、大人のもの
だったかわからない。でも、あの声はいっく
んだった。子どもの頃からずっと聞いていた
わたしが聞き間違えるはずが、ない。
もしかして大翔を助けてくれたの?
いまもどこかで見ていてくれてる?
「……いっくん、いるの?」
名前を呼んでも、返ってくる声はなかった。
けれど、緩く吹き抜けた風がやさしく頬を
撫でてくれて、わたしはわずかに目を細めた。



