参道に沿って並ぶ人たちを避けながら奥に
進んでゆくと、やがて朱塗りの建物に辿り着
いた。そこにお父さんの姿はなかったけれど、
視点が高くなれば見つかるかもと思ったわた
しは、石段を上った。
少し高いところから神社を見渡してみると、
すぐに木の下でカメラを構えている男性が目
に留まった。狐面を頭に被り、一歩一歩進ん
でくる行列にレンズを向けている。
他にもカメラを持っている来場者はいたけ
れど、背格好が似ている気がする。正面から
行列を撮ると言っていたから、お父さんかも。
わたしは急いで石段を駆け下りると、その
人の元に向かった。
「お父さんっ!」
じっとカメラのファインダーを覗き込んで
いる男性に、いきなり声をかける。どきどき
しながらこっちを向くのを待っていると……
見たこともないおじさんがわたしを見て、目
を瞬いた。
「はい?」
「ごめんなさい、人違いでした!」
見ず知らずの子に「お父さん」と呼ばれた
男性は口をへの字に曲げ、またファインダー
を覗く。やっちゃった、と心の中でボヤくと、
わたしは行列に心を奪われている多くの来場
者に目を向けた。門前町を出発して神社まで
歩いてきた一行は、もうすぐ終点に辿り着こ
うとしている。お父さんはこの行列をどこか
で撮影しているんだろう。
だから、もう神楽殿にはいないんだ。
そのことに思い至ると、わたしはカメラを
手にした人を探し始めた。けれどあまりに数
が多すぎて、お父さんを見つけられない。
狐面で顔を隠している人、カメラを首から
提げているお爺さん、浴衣姿で自撮りしてい
る女の子たち。さまざまな人が目に飛び込ん
できて、心臓の音だけが耳に響いて、その場
に立ち尽くしてしまう。世界がわたしを置き
去りにして回っているように感じて、足元が
揺らいだ。
――このままじゃ、大翔が。
もう間に合わないかも、という不安に心が
潰れかけた時だった。
『あっちだよ』
喧騒の中からふいに懐かしい声が聞こえて、
わたしは目を見開いた。
「……いっくん?」
そんなはずない、と思いながら声がした方
を振り返る。すると人ごみの中から、すっと
誰かの手がどこかを指さしているのが見えた。
その指先を視線で辿ると、灯篭の影に三脚を
立ててカメラを覗いている男性が見える。
ファインダーから顔を上げ、足元に置いて
あるカバンからなにかを取り出していたのは、
大翔のお父さんだった。
進んでゆくと、やがて朱塗りの建物に辿り着
いた。そこにお父さんの姿はなかったけれど、
視点が高くなれば見つかるかもと思ったわた
しは、石段を上った。
少し高いところから神社を見渡してみると、
すぐに木の下でカメラを構えている男性が目
に留まった。狐面を頭に被り、一歩一歩進ん
でくる行列にレンズを向けている。
他にもカメラを持っている来場者はいたけ
れど、背格好が似ている気がする。正面から
行列を撮ると言っていたから、お父さんかも。
わたしは急いで石段を駆け下りると、その
人の元に向かった。
「お父さんっ!」
じっとカメラのファインダーを覗き込んで
いる男性に、いきなり声をかける。どきどき
しながらこっちを向くのを待っていると……
見たこともないおじさんがわたしを見て、目
を瞬いた。
「はい?」
「ごめんなさい、人違いでした!」
見ず知らずの子に「お父さん」と呼ばれた
男性は口をへの字に曲げ、またファインダー
を覗く。やっちゃった、と心の中でボヤくと、
わたしは行列に心を奪われている多くの来場
者に目を向けた。門前町を出発して神社まで
歩いてきた一行は、もうすぐ終点に辿り着こ
うとしている。お父さんはこの行列をどこか
で撮影しているんだろう。
だから、もう神楽殿にはいないんだ。
そのことに思い至ると、わたしはカメラを
手にした人を探し始めた。けれどあまりに数
が多すぎて、お父さんを見つけられない。
狐面で顔を隠している人、カメラを首から
提げているお爺さん、浴衣姿で自撮りしてい
る女の子たち。さまざまな人が目に飛び込ん
できて、心臓の音だけが耳に響いて、その場
に立ち尽くしてしまう。世界がわたしを置き
去りにして回っているように感じて、足元が
揺らいだ。
――このままじゃ、大翔が。
もう間に合わないかも、という不安に心が
潰れかけた時だった。
『あっちだよ』
喧騒の中からふいに懐かしい声が聞こえて、
わたしは目を見開いた。
「……いっくん?」
そんなはずない、と思いながら声がした方
を振り返る。すると人ごみの中から、すっと
誰かの手がどこかを指さしているのが見えた。
その指先を視線で辿ると、灯篭の影に三脚を
立ててカメラを覗いている男性が見える。
ファインダーから顔を上げ、足元に置いて
あるカバンからなにかを取り出していたのは、
大翔のお父さんだった。



