駆けてきた道を逆走すると、景色が違って
見えた。空は群青から紫紺に変わり、木々が
夜の訪れを静かに受け止めていた。ぼんやり
と道を照らす街灯は心許なく、通り過ぎる車
のヘッドライトが眩しい。サイレンを鳴らし
ながら救急車が通り過ぎて視界が染まると、
目の奥がチカチカした。
息を吸うたびに脇腹が痛んで手で押さえる。
来るときは緩やかな下り坂だったのに、いま
は凸凹の登り坂がどこまでも続いていて踏み
出す一歩が小さくなる。
急いでお父さんのところに行かなきゃ。
そう思って顎を上げ、思いきり息を吸った
時だった。
「うっ、わ!」
足がもつれ、わたしは勢いよく歩道に倒れ
込んでしまった。
「いっっ……たぁ」
とっさに両手を付いたものの、膝に鋭い熱
が走る。デニムのショートパンツから伸びる
足を覗けば、暗がりでも擦り剝けているのが
わかった。――やっちゃった。顔を顰めつつ
立ち上がり、傷に触れてみる。指先にぬるり
とした感触があって、思わずため息をついた。
どうしてこんな時に転ぶかな。立ち止まっ
ている場合じゃないのに、なにもないところ
で転んでしまった自分に腹が立ってしまう。
血の付いた指をスカートで拭うと、曲がり
くねった道の先を見つめた。こうしている間
も未来は望まない方へ進んでいる。その未来
を変えるため、わたしは踏み出す足に力を込
めて再び走り始める。膝を曲げるたびにズキ
ズキ痛んだけれど、大翔の痛みに比べればど
うってことないと自分にいい聞かせ手足を動
かした。
生ぬるい夜風に髪を預けて無我夢中で駆け
て行くと、やがて見覚えのある赤と白の看板
が見えた。
その向こうにたくさんの人が群がっている。
耳を澄ませば、シャララン、シャララン、と
涼し気な鈴の音が聴こえてくる。もうお祭り
が始まってるんだ。わたしは夕闇の中を練り
歩く一行を目指し、一気に駆け抜けた。
見えた。空は群青から紫紺に変わり、木々が
夜の訪れを静かに受け止めていた。ぼんやり
と道を照らす街灯は心許なく、通り過ぎる車
のヘッドライトが眩しい。サイレンを鳴らし
ながら救急車が通り過ぎて視界が染まると、
目の奥がチカチカした。
息を吸うたびに脇腹が痛んで手で押さえる。
来るときは緩やかな下り坂だったのに、いま
は凸凹の登り坂がどこまでも続いていて踏み
出す一歩が小さくなる。
急いでお父さんのところに行かなきゃ。
そう思って顎を上げ、思いきり息を吸った
時だった。
「うっ、わ!」
足がもつれ、わたしは勢いよく歩道に倒れ
込んでしまった。
「いっっ……たぁ」
とっさに両手を付いたものの、膝に鋭い熱
が走る。デニムのショートパンツから伸びる
足を覗けば、暗がりでも擦り剝けているのが
わかった。――やっちゃった。顔を顰めつつ
立ち上がり、傷に触れてみる。指先にぬるり
とした感触があって、思わずため息をついた。
どうしてこんな時に転ぶかな。立ち止まっ
ている場合じゃないのに、なにもないところ
で転んでしまった自分に腹が立ってしまう。
血の付いた指をスカートで拭うと、曲がり
くねった道の先を見つめた。こうしている間
も未来は望まない方へ進んでいる。その未来
を変えるため、わたしは踏み出す足に力を込
めて再び走り始める。膝を曲げるたびにズキ
ズキ痛んだけれど、大翔の痛みに比べればど
うってことないと自分にいい聞かせ手足を動
かした。
生ぬるい夜風に髪を預けて無我夢中で駆け
て行くと、やがて見覚えのある赤と白の看板
が見えた。
その向こうにたくさんの人が群がっている。
耳を澄ませば、シャララン、シャララン、と
涼し気な鈴の音が聴こえてくる。もうお祭り
が始まってるんだ。わたしは夕闇の中を練り
歩く一行を目指し、一気に駆け抜けた。



