「ちょっっ、どうしたの!?鷲塚さん!!
ねえっ!?すみません、誰かっ、看護師さん
呼んでください!!」
必死の形相で長椅子に座っている人たちに
助けを求めると、ボーダーのポロシャツを着
たおじさんがアタフタしながら呼びに行って
くれた。そして、すぐに女性の看護師を連れ
て戻ってきてくれた。
「大丈夫ですかー?」
「聞こえますかー?」
鷲塚さんの傍らに膝をつき、看護師が肩を
叩く。けれど返ってくる言葉も、反応もなく、
看護師はわたしを向いた。
「もしかしてバスに乗っていた方ですか?」
「はいっ」
「意識がないですね。どこか出血している
のかも」
「そんな……いままで、しゃべってたのに」
予想もしてなかった事態に青ざめていると、
カタカタという音と共にストレッチャーが運
ばれてくる。いち、にっ、さん、と、掛け声
をかけて運んできたストレッチャーに鷲塚さ
んを乗せると、看護師は「画像で確認します」
と言い置いてあっという間に行ってしまった。
「……どうしよう」
ついて行くべきか、ここに残るべきか。迷
う間もなくひとり取り残されてしまったわた
しは、額に手をあてて壁に背を預けた。看護
師を呼んできてくれたおじさんがなにか声を
かけてくれたけれど、頭が言葉の意味を理解
する前に首を振ってしまった。
冷たい壁の感触だけが、リアルに伝わって
くる。硬いはずの床がスポンジのように柔ら
かく感じて、気を抜くと床に沈んでしまいそ
うで、わたしは足にぐっと力を込めた。
どうしよう。もう、どうすればいいかわか
らない。運命の歯車にどんどん絡め取られて
いくような感覚に、心が折れそうになる。
鷲塚さんは大丈夫。大翔になにかが起こる
前に、それを食い止めれば――。そう思って
いたけれど。二度と大切な人を失いたくない
と思って行動したけれど。状況は変わらない
どころか、悪化しているようにさえ感じた。
わたしはここで、あの未来が来るのを待つ
しかないの?
耳の奥で「ピーッ」と不気味な音が鳴って、
思わず耳を塞ぐ。
『芦香を一人にするつもりないから大丈夫』
頬杖を付いて言った大翔の顔が白んで消え
てしまいそうになって、ぎゅっと目を閉じた。
どれくらいそうしていただろう。ゆっくり
呼吸を繰り返しているうち少しずつ足の下の
床が硬さを取り戻してきて、わたしは静かに
瞼を持ち上げた。と、同時に、目の前の扉が
大きく開いて看護師が出てくる。灰色のクリ
ップボードを手につかつかと歩いてゆく看護
師の背中を追いかけると、わたしは声をかけ
た。
ねえっ!?すみません、誰かっ、看護師さん
呼んでください!!」
必死の形相で長椅子に座っている人たちに
助けを求めると、ボーダーのポロシャツを着
たおじさんがアタフタしながら呼びに行って
くれた。そして、すぐに女性の看護師を連れ
て戻ってきてくれた。
「大丈夫ですかー?」
「聞こえますかー?」
鷲塚さんの傍らに膝をつき、看護師が肩を
叩く。けれど返ってくる言葉も、反応もなく、
看護師はわたしを向いた。
「もしかしてバスに乗っていた方ですか?」
「はいっ」
「意識がないですね。どこか出血している
のかも」
「そんな……いままで、しゃべってたのに」
予想もしてなかった事態に青ざめていると、
カタカタという音と共にストレッチャーが運
ばれてくる。いち、にっ、さん、と、掛け声
をかけて運んできたストレッチャーに鷲塚さ
んを乗せると、看護師は「画像で確認します」
と言い置いてあっという間に行ってしまった。
「……どうしよう」
ついて行くべきか、ここに残るべきか。迷
う間もなくひとり取り残されてしまったわた
しは、額に手をあてて壁に背を預けた。看護
師を呼んできてくれたおじさんがなにか声を
かけてくれたけれど、頭が言葉の意味を理解
する前に首を振ってしまった。
冷たい壁の感触だけが、リアルに伝わって
くる。硬いはずの床がスポンジのように柔ら
かく感じて、気を抜くと床に沈んでしまいそ
うで、わたしは足にぐっと力を込めた。
どうしよう。もう、どうすればいいかわか
らない。運命の歯車にどんどん絡め取られて
いくような感覚に、心が折れそうになる。
鷲塚さんは大丈夫。大翔になにかが起こる
前に、それを食い止めれば――。そう思って
いたけれど。二度と大切な人を失いたくない
と思って行動したけれど。状況は変わらない
どころか、悪化しているようにさえ感じた。
わたしはここで、あの未来が来るのを待つ
しかないの?
耳の奥で「ピーッ」と不気味な音が鳴って、
思わず耳を塞ぐ。
『芦香を一人にするつもりないから大丈夫』
頬杖を付いて言った大翔の顔が白んで消え
てしまいそうになって、ぎゅっと目を閉じた。
どれくらいそうしていただろう。ゆっくり
呼吸を繰り返しているうち少しずつ足の下の
床が硬さを取り戻してきて、わたしは静かに
瞼を持ち上げた。と、同時に、目の前の扉が
大きく開いて看護師が出てくる。灰色のクリ
ップボードを手につかつかと歩いてゆく看護
師の背中を追いかけると、わたしは声をかけ
た。



