――あそこが事故現場だ。
頭の奥のキンと冷えた部分がそう理解する。
わたしはアスファルトを蹴る足に力を込める
と、人の流れが滞っている場所に突っ込んで
行った。
「ごめんなさいっ、ちょっと……通してっ」
肩で息をしながら人ごみを掻き分ける。手
を伸ばし、スマホで撮影していた浴衣姿の子
がしかめっ面を向けたけど構っていられない。
その子を押しのけ、揉みくしゃにされながら
野次馬の最前列に出た。そして前に出て、心
の準備もないまま事故の惨状を目の当たりに
したわたしは、ふらっ、とよろけた。
オレンジ色の路線バスが、大型トラックに
突っ込まれてひしゃげていた。パトカーの赤
色灯がチカチカと周囲を赤く照らし、その中
を慌ただしく動き回っている人の声が耳に突
き刺さる。
「赤タグ一名、ストレッチャー急いで!!」
「歩ける人はこっちへ移動してください!」
現場は騒然としていた。道路にはガラスや
車体の破片が散乱していて、離れたところに
敷かれたシートの上でたくさんの人たちが救
護を受けている。バスの中にまだ乗客が残っ
ているのか、白いヘルメットを被った救助隊
が変形した車両から人を引き上げていた。
このバスに大翔が乗ってたの?
だから鷲塚さんは震えてたの?
未来視で視えた光景と目の前の光景が重な
って、全身から血の気が引いていく。でも、
血の付いたカメラを持って彼女が震えていた
場所に、事故車は視えなかった。視えていれ
ば絶対このバスに乗らなかった。
きっと鷲塚さんが立ってた場所はもう少し
先なんだ。そう思ってもう一度人ごみを掻き
分け、歩道に戻る。額から流れてきた冷たい
汗を拭うと、わたしは事故現場を囲うように
できた人垣を大きく回り込んだ。
そうして見えた光景に、はっと息を飲む。
黄色い規制線の向こうに群がる人々。茜と
群青が交ざり合う、地平線。要救助者を待つ
何台もの、救急車。
――わたしに視えたのは、この角度だ。
頭の中で欠けていたピースが、ぴったりと
嵌る。ここからじゃ、ひしゃげたバスも大型
トラックも見えない。どんなことが起こるの
か予測できない。
頭の奥のキンと冷えた部分がそう理解する。
わたしはアスファルトを蹴る足に力を込める
と、人の流れが滞っている場所に突っ込んで
行った。
「ごめんなさいっ、ちょっと……通してっ」
肩で息をしながら人ごみを掻き分ける。手
を伸ばし、スマホで撮影していた浴衣姿の子
がしかめっ面を向けたけど構っていられない。
その子を押しのけ、揉みくしゃにされながら
野次馬の最前列に出た。そして前に出て、心
の準備もないまま事故の惨状を目の当たりに
したわたしは、ふらっ、とよろけた。
オレンジ色の路線バスが、大型トラックに
突っ込まれてひしゃげていた。パトカーの赤
色灯がチカチカと周囲を赤く照らし、その中
を慌ただしく動き回っている人の声が耳に突
き刺さる。
「赤タグ一名、ストレッチャー急いで!!」
「歩ける人はこっちへ移動してください!」
現場は騒然としていた。道路にはガラスや
車体の破片が散乱していて、離れたところに
敷かれたシートの上でたくさんの人たちが救
護を受けている。バスの中にまだ乗客が残っ
ているのか、白いヘルメットを被った救助隊
が変形した車両から人を引き上げていた。
このバスに大翔が乗ってたの?
だから鷲塚さんは震えてたの?
未来視で視えた光景と目の前の光景が重な
って、全身から血の気が引いていく。でも、
血の付いたカメラを持って彼女が震えていた
場所に、事故車は視えなかった。視えていれ
ば絶対このバスに乗らなかった。
きっと鷲塚さんが立ってた場所はもう少し
先なんだ。そう思ってもう一度人ごみを掻き
分け、歩道に戻る。額から流れてきた冷たい
汗を拭うと、わたしは事故現場を囲うように
できた人垣を大きく回り込んだ。
そうして見えた光景に、はっと息を飲む。
黄色い規制線の向こうに群がる人々。茜と
群青が交ざり合う、地平線。要救助者を待つ
何台もの、救急車。
――わたしに視えたのは、この角度だ。
頭の中で欠けていたピースが、ぴったりと
嵌る。ここからじゃ、ひしゃげたバスも大型
トラックも見えない。どんなことが起こるの
か予測できない。



