「よく聴こえない!大翔は大丈夫なの!?
どこの病院向かってるの!?」
後部座席で声を張り上げる。運転手さんが
びっくりしてちらっと後ろを見たけど、気に
している余裕なんかない。受話器の向こうは
騒がしく、鷲塚さんの声が聴こえづらい。
歪んで聴こえるサイレンの音、『ルート確
保』と叫ぶ隊員の声。ガチャガチャと何かが
ぶつかり合う音。切羽詰まった空気だけが嫌
というほど伝わってきて、わたしの心臓は破
裂しそうなほど早鐘を打っていた。
『搬送……った、医療センター』
その言葉が耳に届いたかと思うと、プツッ
と電話が切れてしまう。
「もしもしっ、医療センターに向かってる
の!?鷲塚さん!?」
ツー、ツー、と虚しく響く電子音に血相を
変え、顔を上げると、わたしは運転手さんに
言った。
「すみません、行き先を変えてください!」
「医療センターですか?」
「はいっ!」
「飛ばしますんで、しっかり掴まっててく
ださいよ」
電話のやり取りから事情を察してくれた運
転手さんがアクセルを踏み込み、スピードを
上げる。窓の外を流れる景色がいっきに早く
なって、わたしはシートベルトを握りしめた。
――待ってて、って言えばよかった。
ついさっきの自分を思い出すと、息が苦し
くなる。
たとえお父さんを待たせることになっても、
迷惑をかけてしまうことになっても、行かな
いでって止めればよかった。そうすれば大翔
は事故に遭わなかったかもしれない。わたし
と一緒にタクシーに乗っていれば、こんなこ
とにならなかったかも。どうしよう、わたし
のせいだ……。
いまさら悔やんでもどうにもならないこと
が、心の中を散らかしていく。こうならない
ために来たのになにも出来なかった無力さが、
胸の中を搔き乱す。
大翔にもしものことがあったら。
大翔までいなくなっちゃったら。
そこまで考えて息苦しさに俯いたわたしは、
細く息を吐き出した。
大丈夫、まだ未来は決まってない。大翔は
救急車の中で、心電図の波形は止まってない。
ここからひっくり返すんだ、運命を。絶対に。
そう自分に言い聞かせると、強いまなざし
をフロントガラスの向こうに向ける。
どこの病院向かってるの!?」
後部座席で声を張り上げる。運転手さんが
びっくりしてちらっと後ろを見たけど、気に
している余裕なんかない。受話器の向こうは
騒がしく、鷲塚さんの声が聴こえづらい。
歪んで聴こえるサイレンの音、『ルート確
保』と叫ぶ隊員の声。ガチャガチャと何かが
ぶつかり合う音。切羽詰まった空気だけが嫌
というほど伝わってきて、わたしの心臓は破
裂しそうなほど早鐘を打っていた。
『搬送……った、医療センター』
その言葉が耳に届いたかと思うと、プツッ
と電話が切れてしまう。
「もしもしっ、医療センターに向かってる
の!?鷲塚さん!?」
ツー、ツー、と虚しく響く電子音に血相を
変え、顔を上げると、わたしは運転手さんに
言った。
「すみません、行き先を変えてください!」
「医療センターですか?」
「はいっ!」
「飛ばしますんで、しっかり掴まっててく
ださいよ」
電話のやり取りから事情を察してくれた運
転手さんがアクセルを踏み込み、スピードを
上げる。窓の外を流れる景色がいっきに早く
なって、わたしはシートベルトを握りしめた。
――待ってて、って言えばよかった。
ついさっきの自分を思い出すと、息が苦し
くなる。
たとえお父さんを待たせることになっても、
迷惑をかけてしまうことになっても、行かな
いでって止めればよかった。そうすれば大翔
は事故に遭わなかったかもしれない。わたし
と一緒にタクシーに乗っていれば、こんなこ
とにならなかったかも。どうしよう、わたし
のせいだ……。
いまさら悔やんでもどうにもならないこと
が、心の中を散らかしていく。こうならない
ために来たのになにも出来なかった無力さが、
胸の中を搔き乱す。
大翔にもしものことがあったら。
大翔までいなくなっちゃったら。
そこまで考えて息苦しさに俯いたわたしは、
細く息を吐き出した。
大丈夫、まだ未来は決まってない。大翔は
救急車の中で、心電図の波形は止まってない。
ここからひっくり返すんだ、運命を。絶対に。
そう自分に言い聞かせると、強いまなざし
をフロントガラスの向こうに向ける。



