そこで会話が途切れ、カチッとメーターが
上がる。初乗りの料金から何度か加算された
金額は一一〇〇円を超えたところで、少しで
も進んでくれることを祈りながら視線を窓の
外に向ける。
ビニールハウスの前を、白い軽トラックが
走っている。そのスピードがやけに遅く見え
るのは、きっと、のんびりした景色のせいだ
ろう。わたしは流れる景色を見ながら、緩く
唇を噛んだ。
大翔たちはいま、どの辺にいるんだろう?
渋滞に巻き込まれてのろのろ走っているであ
ろう、バスを思い浮かべる。バスは停留所に
停まりながら進む。しかも混雑しているから、
乗車も降車も時間がかかるだろう。そう考え
ると、そんなに差は開いていない気がする。
近道してくれているし、案外、すぐに追い
つけるかも。ギリギリまでタクシーで行って、
そこから猛ダッシュすれば。
「……走れるかな、わたし」
近ごろ運動不足で体が鈍っていることを思
い出し、ぼそっと呟いた時だった。
サコッシュの中でピリリとスマホが鳴った。
大翔からだ。慌ててスマホを取り出したわた
しは、液晶画面を見て目を見開く。電話の主
は大翔ではなく鷲塚さんで、一瞬、えっ?と
固まってしまった。
そういえば講習の時、連絡先を交換したん
だった。そのことに思い至り、ミドリの応答
ボタンに触れる。
触れた瞬間、わたしは一方的にしゃべった。
「いま、タクシーで向かってる。そっちは
神社着いた?」
遅れてごめんね、という言葉をすっ飛ばし、
早口で言ったわたしに鷲塚さんの返事はない。
代わりに洟を啜る音と背後からガヤガヤ騒が
しい音が聴こえてきて、わたしは眉を顰めた。
「……もしもし、鷲塚さん?」
スマホに耳を押し付ける。ぎゅっと握った
指が冷たくなるのを感じながら、耳をそばだ
てた。すると、浅く息を吐く気配がしてうわ
ずった声が聴こえた。
『いま救急車……ってる。バスが事故……
っ、大翔が……』
ざわっと鳥肌が立った。
――バス、事故、大翔。
雑音に交じって断片的に聴こえてきた言葉
が、望まない未来をわたしに突き付ける。ガ
タンとタクシーが揺れて、体がシートに押し
付けられる。体の芯から震えがくるのを感じ、
わたしはスマホを握る手に力を込めた。
上がる。初乗りの料金から何度か加算された
金額は一一〇〇円を超えたところで、少しで
も進んでくれることを祈りながら視線を窓の
外に向ける。
ビニールハウスの前を、白い軽トラックが
走っている。そのスピードがやけに遅く見え
るのは、きっと、のんびりした景色のせいだ
ろう。わたしは流れる景色を見ながら、緩く
唇を噛んだ。
大翔たちはいま、どの辺にいるんだろう?
渋滞に巻き込まれてのろのろ走っているであ
ろう、バスを思い浮かべる。バスは停留所に
停まりながら進む。しかも混雑しているから、
乗車も降車も時間がかかるだろう。そう考え
ると、そんなに差は開いていない気がする。
近道してくれているし、案外、すぐに追い
つけるかも。ギリギリまでタクシーで行って、
そこから猛ダッシュすれば。
「……走れるかな、わたし」
近ごろ運動不足で体が鈍っていることを思
い出し、ぼそっと呟いた時だった。
サコッシュの中でピリリとスマホが鳴った。
大翔からだ。慌ててスマホを取り出したわた
しは、液晶画面を見て目を見開く。電話の主
は大翔ではなく鷲塚さんで、一瞬、えっ?と
固まってしまった。
そういえば講習の時、連絡先を交換したん
だった。そのことに思い至り、ミドリの応答
ボタンに触れる。
触れた瞬間、わたしは一方的にしゃべった。
「いま、タクシーで向かってる。そっちは
神社着いた?」
遅れてごめんね、という言葉をすっ飛ばし、
早口で言ったわたしに鷲塚さんの返事はない。
代わりに洟を啜る音と背後からガヤガヤ騒が
しい音が聴こえてきて、わたしは眉を顰めた。
「……もしもし、鷲塚さん?」
スマホに耳を押し付ける。ぎゅっと握った
指が冷たくなるのを感じながら、耳をそばだ
てた。すると、浅く息を吐く気配がしてうわ
ずった声が聴こえた。
『いま救急車……ってる。バスが事故……
っ、大翔が……』
ざわっと鳥肌が立った。
――バス、事故、大翔。
雑音に交じって断片的に聴こえてきた言葉
が、望まない未来をわたしに突き付ける。ガ
タンとタクシーが揺れて、体がシートに押し
付けられる。体の芯から震えがくるのを感じ、
わたしはスマホを握る手に力を込めた。



