『バス来た』
そのメッセージで二人のやり取りが終わる。
まるで告白なんかなかったみたいに、プツン
とメッセージが途絶える。わたしはスマホを
しまうと、静かに窓の外を見やった。
低い山の向こうが茜に染まっている。群青
と混ざり合って、世界が暮色に包まれる時刻
が迫っている。ふいに、アナウンスが流れた。
低く抑揚のない声と共にカタンと電車が揺れ、
あちこちからため息が聞こえる。走り出した
電車は止まっていた時間を取り戻すように、
田園風景の中を一直線に進んで行った。
ぽつんと大空を横切るカラスを窓の向こう
に眺めていたわたしは、そっと唇を噛みしめ
た。
「最後尾……どこ」
階段を駆け下り駅前ロータリーを見渡した
瞬間、そんな言葉が口を突いて出た。
満岡稲荷神社に向かう「医療センター」行
きのバス停には、最後尾がわからないくらい
ぐねぐねと行列が出来ていた。次のバスに乗
ればすぐ大翔たちと合流できると思っていた
けれど、どうやらその考えは甘かったらしい。
まさか、ここまで混んでいるとは。突っ立
って見ている間も列は徐々に長くなっていく。
バスは一時間に二本。次のバスに乗れなけれ
ば、さらに三十分待つことになってしまう。
それだけは、困る。
一分でも早く大翔のところに行きたいのに。
ぐっと手を握りしめると、わたしはバス停
の向かい側にあるタクシー乗り場に向かった。
そこも順番を待つ人の列が出来ていたけれど、
今日は書き入れ時とばかりにタクシーもずら
っと並んでいたので待ち時間は短そうだった。
思った通り、三人、四人と、どんどん客が
ドアの向こうに吸い込まれて行って、あっと
いう間に黄色いタクシーが目の前に来る。
ガチャっとドアが開き、後部座席に乗り込
んだわたしは真っ先に訊いた。
「満岡稲荷神社に行きたいんですけど……
ここからいくらくらいかかりますか?」
白い手袋をした運転手さんが「うーん」と、
首を捻る。
「普段は二〇〇〇円もかからないんですけ
どね。今日は祭りがあるんで、三〇〇〇円は
軽く超えますよ」
「……三〇〇〇円」
金額を聞いて眉を寄せる。財布の中を確認
すれば千円札が二枚と百円玉が四枚。小銭を
かき集めても二四六八円しかない。昨日の美
容院代が、地味に小遣いを圧迫している。
わたしは口を引き結ぶと、顔を上げた。
そのメッセージで二人のやり取りが終わる。
まるで告白なんかなかったみたいに、プツン
とメッセージが途絶える。わたしはスマホを
しまうと、静かに窓の外を見やった。
低い山の向こうが茜に染まっている。群青
と混ざり合って、世界が暮色に包まれる時刻
が迫っている。ふいに、アナウンスが流れた。
低く抑揚のない声と共にカタンと電車が揺れ、
あちこちからため息が聞こえる。走り出した
電車は止まっていた時間を取り戻すように、
田園風景の中を一直線に進んで行った。
ぽつんと大空を横切るカラスを窓の向こう
に眺めていたわたしは、そっと唇を噛みしめ
た。
「最後尾……どこ」
階段を駆け下り駅前ロータリーを見渡した
瞬間、そんな言葉が口を突いて出た。
満岡稲荷神社に向かう「医療センター」行
きのバス停には、最後尾がわからないくらい
ぐねぐねと行列が出来ていた。次のバスに乗
ればすぐ大翔たちと合流できると思っていた
けれど、どうやらその考えは甘かったらしい。
まさか、ここまで混んでいるとは。突っ立
って見ている間も列は徐々に長くなっていく。
バスは一時間に二本。次のバスに乗れなけれ
ば、さらに三十分待つことになってしまう。
それだけは、困る。
一分でも早く大翔のところに行きたいのに。
ぐっと手を握りしめると、わたしはバス停
の向かい側にあるタクシー乗り場に向かった。
そこも順番を待つ人の列が出来ていたけれど、
今日は書き入れ時とばかりにタクシーもずら
っと並んでいたので待ち時間は短そうだった。
思った通り、三人、四人と、どんどん客が
ドアの向こうに吸い込まれて行って、あっと
いう間に黄色いタクシーが目の前に来る。
ガチャっとドアが開き、後部座席に乗り込
んだわたしは真っ先に訊いた。
「満岡稲荷神社に行きたいんですけど……
ここからいくらくらいかかりますか?」
白い手袋をした運転手さんが「うーん」と、
首を捻る。
「普段は二〇〇〇円もかからないんですけ
どね。今日は祭りがあるんで、三〇〇〇円は
軽く超えますよ」
「……三〇〇〇円」
金額を聞いて眉を寄せる。財布の中を確認
すれば千円札が二枚と百円玉が四枚。小銭を
かき集めても二四六八円しかない。昨日の美
容院代が、地味に小遣いを圧迫している。
わたしは口を引き結ぶと、顔を上げた。



