あと五分で着くと思っていた駅は、影も形
も見えなかった。運転士の肩越しに見えるの
はどこまでも続く線路と、錆びた信号機だけ
で両側の車窓には長閑な風景が広がっている。
ダメだ。これじゃ電車が動き出したとして
も間に合わない。そう悟ったわたしは親指で
画面に触れた。
『ごめん、先行って』
送った瞬間、既読が付く。でもすぐに返事
が来ない。わたしは続けてメッセージを送る。
『バスに乗らないとお父さん待たせちゃう。
先行って』
祈るようにスマホの画面をじっと見つめる。
鷲塚さんと相談しているのか、大翔から返信
が来ない。次のバスで追いかけるから。二人
の背中を押すつもりで親指を動かしていた時、
短いメッセージが届いた。
『わかった。先行く』
ほっと息を漏らす。
『神社で合流しよう』
書きかけの文章を消してそんな一文を送信
すると、了解のスタンプが届いた。よかった、
お父さんに迷惑かけちゃうところだった。
スマホを握ったまま、運転席の窓に背中を
預ける。訳もわからずいたずらに時間が過ぎ
ていく車内は、落ち着かない視線とため息が
充満している。いつになったら動くんだろう。
もし、ここに閉じ込められたまま大翔の側に
行けなかったら……。嫌な予感に胸がざわつ
いた瞬間、シュポンとスマホが鳴った。
大翔だ。わたしは画面に目を落とした。
『言い忘れたことがある』
予想外のひと言に、首を傾げる。いったい
なにを言い忘れたんだろう?
見当もつかず画面を凝視していたわたしは、
ふっと笑みを零した。
『俺のために講習受けてくれてありがとう』
なんだ、そんなこと。いま言わなくてもい
いのにと思いながら返す文章を考える。する
と、返事を送らないうちにまたシュポンと音
が鳴った。今度はなに?空色の背景にぽっか
り浮かんだメッセージを見たわたしは、思わ
ず息を止めた。
『それとさ、俺、やっぱ、芦香が好き』
カッと顔が熱くなる。慌ててスマホを胸に
押し付ける。えっ、なんでいま?これ、なん
て返せばいいの?突然の告白で頭が真っ白に
なってしまう。嬉しいけど、あまりにもタイ
ミングが悪すぎる。
わたしは息を整え、スマホを覗いた。もう
一通メッセージが届いている。さっとそれに
目を走らせたわたしの心臓が、胸の中で飛び
跳ねた。
『諦めようとしてた自分をぶん殴りたいく
らい、好き。あ、もしかしていま死亡フラグ
立っちゃった?』
『馬鹿っ、冗談になってない!!』
超高速で指を動かす。好きって気持ちには
答えられないのに、こういう突っ込みは考え
るより先に指が動いてしまう。
大翔がスタンプで笑う。わたしはケタケタ
笑ってこっちを指さしているカエルに怒りの
マークを三つ送った。
も見えなかった。運転士の肩越しに見えるの
はどこまでも続く線路と、錆びた信号機だけ
で両側の車窓には長閑な風景が広がっている。
ダメだ。これじゃ電車が動き出したとして
も間に合わない。そう悟ったわたしは親指で
画面に触れた。
『ごめん、先行って』
送った瞬間、既読が付く。でもすぐに返事
が来ない。わたしは続けてメッセージを送る。
『バスに乗らないとお父さん待たせちゃう。
先行って』
祈るようにスマホの画面をじっと見つめる。
鷲塚さんと相談しているのか、大翔から返信
が来ない。次のバスで追いかけるから。二人
の背中を押すつもりで親指を動かしていた時、
短いメッセージが届いた。
『わかった。先行く』
ほっと息を漏らす。
『神社で合流しよう』
書きかけの文章を消してそんな一文を送信
すると、了解のスタンプが届いた。よかった、
お父さんに迷惑かけちゃうところだった。
スマホを握ったまま、運転席の窓に背中を
預ける。訳もわからずいたずらに時間が過ぎ
ていく車内は、落ち着かない視線とため息が
充満している。いつになったら動くんだろう。
もし、ここに閉じ込められたまま大翔の側に
行けなかったら……。嫌な予感に胸がざわつ
いた瞬間、シュポンとスマホが鳴った。
大翔だ。わたしは画面に目を落とした。
『言い忘れたことがある』
予想外のひと言に、首を傾げる。いったい
なにを言い忘れたんだろう?
見当もつかず画面を凝視していたわたしは、
ふっと笑みを零した。
『俺のために講習受けてくれてありがとう』
なんだ、そんなこと。いま言わなくてもい
いのにと思いながら返す文章を考える。する
と、返事を送らないうちにまたシュポンと音
が鳴った。今度はなに?空色の背景にぽっか
り浮かんだメッセージを見たわたしは、思わ
ず息を止めた。
『それとさ、俺、やっぱ、芦香が好き』
カッと顔が熱くなる。慌ててスマホを胸に
押し付ける。えっ、なんでいま?これ、なん
て返せばいいの?突然の告白で頭が真っ白に
なってしまう。嬉しいけど、あまりにもタイ
ミングが悪すぎる。
わたしは息を整え、スマホを覗いた。もう
一通メッセージが届いている。さっとそれに
目を走らせたわたしの心臓が、胸の中で飛び
跳ねた。
『諦めようとしてた自分をぶん殴りたいく
らい、好き。あ、もしかしていま死亡フラグ
立っちゃった?』
『馬鹿っ、冗談になってない!!』
超高速で指を動かす。好きって気持ちには
答えられないのに、こういう突っ込みは考え
るより先に指が動いてしまう。
大翔がスタンプで笑う。わたしはケタケタ
笑ってこっちを指さしているカエルに怒りの
マークを三つ送った。



