「普段からカメラを扱っていて、二人とも
知識はあるからね。撮りどころが多いと一人
で押さえきれないから、別の角度を頼めるの
は助かるんだ。頼りにしてる」
大翔が長いまつ毛を伏せる。お父さんのひ
と言が嬉しくて仕方ないはずなのに、顔に出
さないようにしているのがヒシヒシと伝わっ
てくる。大翔の本心がわかってしまうだけに、
わたしは口元が緩んでしまうのを止められな
い。今日は来てよかった。そんな想いを噛み
しめ、わたしは「あの」と、切り出した。
「わたしにもなにか手伝えること、ありま
せんか?カメラの知識ゼロでも出来ることが
あったら手伝いたいんです」
「はっ?」
口にした途端、隣から素っ頓狂な声が聞こ
えてくる。顔面全体で無理無理とうったえて
いる大翔をちらっと見て、お父さんは顎を撫
でた。
「もちろん。じゃあ……芦香さんには大翔
のサポートをお願いしよう。カメラバッグを
持ったり、レンズを渡したり」
「はいっ」
「それ絶対邪魔なヤツ」
張り切って返事をしたわたしに大翔が渋い
顔をする。お父さんは目を細めて笑うと懐を
探り、名刺を取り出した。
「これは僕の連絡先。当日は神楽殿の前で
待ち合わせをしよう。時間は、そうだな……
余裕をもって五時半にしようか」
恭しく両手で名刺を受け取ったわたしは時
間を聞いた瞬間、現実に引き戻される。五時
半といえばちょうど町が暮色に染まる時刻だ。
震えている鷲塚さんの向こう、茜色と群青色
が交ざり合った地平線を思い出して、思わず
名刺を持つ手に力が入った。
大翔の身になにかが起こることはわかって
いる。その運命を変えるためにわたしは行く
のだけど……お父さんがそのことを知ったら、
「絶対、来るな」と止めるに違いない。
笑っているのに、ぎゅっと胸が苦しくなる。
本当のことを知らないまま大翔と笑っている
お父さんを見れば、どうしたって胸が苦しく
なってしまう。自分がした選択を後悔する日
が来たら、どうしよう――。
言いようのない不安を笑顔の下に隠したま
ま、わたしは名刺を財布にしまった。
知識はあるからね。撮りどころが多いと一人
で押さえきれないから、別の角度を頼めるの
は助かるんだ。頼りにしてる」
大翔が長いまつ毛を伏せる。お父さんのひ
と言が嬉しくて仕方ないはずなのに、顔に出
さないようにしているのがヒシヒシと伝わっ
てくる。大翔の本心がわかってしまうだけに、
わたしは口元が緩んでしまうのを止められな
い。今日は来てよかった。そんな想いを噛み
しめ、わたしは「あの」と、切り出した。
「わたしにもなにか手伝えること、ありま
せんか?カメラの知識ゼロでも出来ることが
あったら手伝いたいんです」
「はっ?」
口にした途端、隣から素っ頓狂な声が聞こ
えてくる。顔面全体で無理無理とうったえて
いる大翔をちらっと見て、お父さんは顎を撫
でた。
「もちろん。じゃあ……芦香さんには大翔
のサポートをお願いしよう。カメラバッグを
持ったり、レンズを渡したり」
「はいっ」
「それ絶対邪魔なヤツ」
張り切って返事をしたわたしに大翔が渋い
顔をする。お父さんは目を細めて笑うと懐を
探り、名刺を取り出した。
「これは僕の連絡先。当日は神楽殿の前で
待ち合わせをしよう。時間は、そうだな……
余裕をもって五時半にしようか」
恭しく両手で名刺を受け取ったわたしは時
間を聞いた瞬間、現実に引き戻される。五時
半といえばちょうど町が暮色に染まる時刻だ。
震えている鷲塚さんの向こう、茜色と群青色
が交ざり合った地平線を思い出して、思わず
名刺を持つ手に力が入った。
大翔の身になにかが起こることはわかって
いる。その運命を変えるためにわたしは行く
のだけど……お父さんがそのことを知ったら、
「絶対、来るな」と止めるに違いない。
笑っているのに、ぎゅっと胸が苦しくなる。
本当のことを知らないまま大翔と笑っている
お父さんを見れば、どうしたって胸が苦しく
なってしまう。自分がした選択を後悔する日
が来たら、どうしよう――。
言いようのない不安を笑顔の下に隠したま
ま、わたしは名刺を財布にしまった。



