名もなき空に、青い風が吹く

 「デートって言っても、親付きだけど」

 「親付き?どういうこと?」

 「実は今週末、父さんと会うんだけどそこ
に同席して欲しい。前から芦香に会ってみた
いって言ってたから祭りの打ち合わせがてら、
紹介ってことで」

 「そういうことなら……別に構わないけど」

 なんだか真に受けて大袈裟に反応してしま
った自分が恥ずかしくて、声が尻すぼみにな
る。大翔のお父さんはイベント専門のカメラ
マンをしていて、全国あちこち飛び回ってい
ると聞いたことがある。でも話に聞いていた
だけで写真すら見たことがない。

 いったいどんな人だろう?わたしに会いた
がってるってことは、それだけわたしのこと
を大翔が話してるってことだよね?

 そんなことを考えつつ横目で大翔を見た時、
野外ステージから聴き馴染みのある壮大な曲
が流れ始めた。風を震わせるような力強い行
進曲に耳を傾け、わたしは残りのベビーカス
テラを大翔と分け合った。