午前零時、夜に恋をした。

バタン、と扉が閉まる音がして、ひまりの気配が完全に消えた

「……行った、な」

漣くんがホッとしたように息を吐いて、ゆっくりと私を包んでいた腕の力を緩めた

「う、うん……。ありがと、漣くん」

タンクの陰から一歩外に出ると、急に冬の冷たい風が吹き込んできた
さっきまであんなに熱かったのに、離れた瞬間、なんだか急に寂しくなっちゃう

チラッと漣くんの顔を見ると、彼はわざとらしく空を見上げながら、
赤い耳を隠すように首元をマフラーに埋めていた

キーンコーンカーンコーン……
その時、無情にも午後の授業の予鈴が鳴り響いた

「あ、やばい! 戻らなきゃ!」

「おい、待て。一緒に戻ったらそれこそ怪しまれるだろ。」

「お前が先に行け。俺は5分くらいずらしてから戻る」

漣くんはぶっきらぼうにそう言うと、私のカバンをポンと手渡してくれた
どこまで行っても私の心配ばかりしてくれる優しさに、胸の奥がキュンとする

「分かった! じゃあ、先に行くね。午後のノートもちゃんと取っておくから!」

「おう。……あ、千歳飴」

扉に手をかけた私を、漣くんの声が引き止める
振り返ると、彼は少しだけ照れくさそうに微笑んでいた

「今日の夜も、零時……待ってるからな」

「……っ、うん!」

私は大きく頷いて、屋上の扉を飛び出した
階段を駆け下りる足取りは、さっきよりもずっと軽くて、
胸の奥の炭酸はさらに激しくシュワシュワと弾けていた

教室に戻ると、ひまりが「あ、天音! どこ行ってたの?」って
駆け寄ってきたけれど、今の私の頭の中は、5分後に教室に入ってくる

――大好きな男の子のことでいっぱいだった。