手フェチ女とピアニスト


「私は手フェチなんだけどさ、」

 ここは適度に騒がしい居酒屋。
 とは言え、話す内容が内容なので、佐伯 由麻(さえき ゆま)は少し小声で話し始めた。
 向かいに座る友人の春花は、焼き鳥を頬張りながら続きを待つ。

「色白・指長め・爪短めで綺麗なんだけど、骨張って男っぽさがあるのが理想」

由麻の主張を聞いた友人の春花が、

「なるほどね~。じゃあこのポスターの人の手が由麻の好みの手じゃない?」

 と、由麻の後ろの壁に貼ってある紙を指差す。
 由麻はぐるりと体をひねってそれをじっと見た。

「ホントだ! 超ストライクな手! ……ピアニスト?」

それはクラシックピアニストの公演のポスター。

(……なぜ居酒屋に?)

 由麻が首を傾げていると、「お待たせいたしましたー泡盛です」と店員が元気よくグラスをテーブルに置いた。