お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

「わかったろ? 君はラニマール公爵家の血を引いているんだ。状況はどうであれ」

そういうことだったのか。まだ心の整理は出来てないけれど、私が産まれた経緯や血筋については理解てきた。

だが1つ問題はある。

「ラニマール公爵家の血を引いていても、侯爵が私を娘とは認めてはいません。私は所詮、使用人の娘です」
「それについてはラニマールに認めさせた。王宮の調査は確かだ。奴も言い逃れは出来ない」

いとも簡単かのような口ぶりに目を丸くする。
王宮の調査は確かなのはわかる。でも、認めさせたって? あの公爵が私を娘だと認めたというの?

驚きで言葉に詰まる。

母が頼ってきた時も私という存在を認めずにいたのに……。

やはりそこは国の機関には逆らえなかったということか。ただでさえ、ジュアナと偽って私を差し出したのに、さらに下手に逆らって立場を余計に悪くさせるよりも、認めた方がまだマシだと考えたのかもしれない。

すると、ユアン王子は複雑そうな顔をした。

「侯爵はジュアナがエルマを身代わりにさせた、と言うことは自分は知らなかったと言い張る。しかし、ジュアナが勝手なことをしたことの責任は親として取るそうだ」
「親として……」
「その事についての懲罰は加える。しかし、反面、俺はお前との結婚を望むので、ラニマール侯爵家は喜んでお前を娘と認めるってわけだ。奴はラニマール侯爵家から嫁げれば誰でも良いらしい。王族と親類になれるのなら、と」

あぁ、そうか……。認めたのはそういう意味があったのか。

卑怯な人だ。私を娘と認めなかったくせに、王子に嫁げるのならばいとも簡単に娘と認める。ズルい人だ。

「私はラニマール侯爵の娘ではありません」

私は父と母の娘だ。料理人である父の……。

「お前の気持ちはわかる。だが、ラニマール侯爵家の娘としてなら、俺はお前と一緒になれるんだ」
「……え?」

ユアン王子の言葉に反応が遅れた。

一緒になれる?そういえぱ、さっき俺はお前との結婚を望むって……。

ショックな内容ばかりで頭が追いつかず、ポカンとユアン王子を見上げる。ユアン王子は苦笑しながらもう一度はっきりと言った。

「つまり、お前がラニマール侯爵家の娘ならジュアナの代わりに嫁ぎに来たと言えるし、罪には問われない。俺とお前は結婚出来るんだ」
「け……!?」
「何を驚く? そのつもりだったんだろう?」

笑うユアン王子に私は顔が熱くなるのを実感する。

「いえ、あの……! そのつもりっていうか、私はその、ただの身代わりで……! 結婚なんて、その……」

動揺しながらそう答える。

確かに王子と結婚するのが、ラニマール侯爵家の長女か次女かの違いだから国としては、ジュアナでも私でもどちらでも良いだろう。

でも……。

「ユ、ユアン王子はよろしいのですか?」
「何が?」
「その……、ジュアナお嬢様じゃなくて……。だって私は嘘をついていたのですよ? いくらラニマール侯爵家の血を引いているとはいえ、そんな信用ならない娘と結婚だなんて……」

あぁ、そうか。
私はハッとした。
きっとユアン王子にとってはジュアナと結婚するくらいなら私の方がマシと思ったのだろうか。ユアン王子に選択権はないのだから。私と仕方なく結婚するしかないのか。

「……なんか、エルマの考えが手に取るようにわかるんだけど」

呆れた声が頭の上から落ちてくる。

「俺の言葉をちゃんと聞いていたか? 俺はお前と結婚出来るって言ったんだ」
「はい」
「結婚しなくちゃならないとも、仕方なく結婚してやるとも言ってない。出来ると言った」

ユアン王子は両手で私の頬を包み込む。その優しい手つきに体が震えた。

「エルマ、君の過去はショックなことだっただろう。悲しい気持ちもよく分かる。でも悪いが、俺は君がラニマール侯爵家の血を引いていることに、正直、安堵しているんだ」
「そんな……」
「だって、君がラニマール侯爵家の血筋だから結婚出来るんだ。ただの身代わりの使用人だったら処刑しなければならないし、結婚なんてもってのほかだ」

ユアン王子の言いたいことがいまいちわからず、ただじっと見つめ返す。王子は目元をほんのり赤くさせ、低く甘い声で言った。

「俺はエルマが好きだから、エルマと結婚出来るのが嬉しい」