「あの……、ユアン王子の仰っている意味がサッパリわかりません……」
私がラニマール公爵家の娘? なんでそんな変な事を言い出したのだろう。
「私は使用人の娘です。母はもう亡くなりましたが、ラニマール公爵家の奥様ではありません」
あぁ、そうか。わかった。ユアン王子は最後に私をからかっているだけなのか。こんな悪趣味な冗談を言う人だったなんて思わなかった。
私は引きつった笑みをこぼす。
「処刑前に私をからかったおつもりですか? それとも死への気を紛らわそうと? どのみち、私には面白くありません」
「からかったつもりも、冗談を言ったつもりもない」
見上げたユアン王子は真剣な瞳で私を見下ろしてくる。
「お前はラニマール公爵家の娘なんだよ」
「……どういうことですか?」
ユアン王子の瞳から、ふざけているようには見えなかった。
だとしたら、私は本当にラニマール公爵家の血を引いているというの?
混乱して思わず額を抑えると、ユアン王子はその手を優しくどかして覗き込んできた。優しい……私の知っているユアン王子の瞳。
「エルマの父親はどんな人だった?」
「父……ですか? ……えっと、父は私が3つの頃に亡くなりました。父の記憶はありませんが、優しい人だったと母から聞いています」
父は料理人だったと聞いたことがある。母と結婚してからは街の食堂で働いていた。裕福ではなかったが、つつましく幸せに暮らしていたと……。そんな父は私が3つの時に事故で亡くなったのだ。
「もしかして、父か母がラニマール家の親戚だったんですか?」
両親の親戚に会ったことはない。話を聞いたこともなかったが、可能性としてはあり得る。父か母がラニマール公爵家の血筋だったとしたら納得できる。
しかし、ユアン王子はゆっくりと首を横に振った。
「違う」
「? 違うって……、どういうことですか?」
益々意味がわからなくて首を傾げる。すると、ユアン王子は少し言いにくそうに、どこか苦しげに告げた。
「エルマの本当の父親は……、ラニマール侯爵なんだ」
「え……」
言葉を失った。
今、ユアン王子はなんて言った? 私の本当の父親が……、ラニマール侯爵? どういうこと?
もう一度ユアン王子を見あげるが、真剣な顔は変わらない。混乱した私は不意に苦笑が漏れた。
「な、何を言い出したかと思えば……。ふざけるのも大概にして下さい。父親がラニマール侯爵なわけないじゃないですか。私の父は3歳までいたんですよ? それはラニマール侯爵ではありませんでした」
父の明確な記憶はないが、母の話や微かに覚えている父はラニマール侯爵などではない。もっと優しくて穏やかな雰囲気の人だった。
侯爵家でも、私を娘のように扱うことはなかったし、そんな素振りは微塵も感じられなかった。私はただの使用人だった。
もし、私が娘ならもう少し特別扱いをしたり、優しくしてくれるのではないか?
ラニマール公爵は、私が悪戯をしたジュアナお嬢様の身代わりだとわかりながら、見せしめの様に私を強く叱責するような人だった。
父親ならそんなことするだろうか?
あり得ない。
「でたらめを言わないで下さい」
「本当のことだ。ちゃんと調べもついている。王宮の調査団が徹底的に調べたんだ。間違いはない」
「そんな……」
愕然として言葉が出てこない。
待って。ユアン王子の言う通り、ラニマール公爵が本当の父親だとしたら、3歳の頃に亡くなった父は偽物だったの? 不倫? 母は父を裏切っていた? ラニマール公爵は私を娘だと知っていたのだろうか? 知っていて、あのような仕打ちをしていたのだろうか?
「ちゃんと説明するから」
わけがわからなくなり混乱して顔を覆う私の肩を、ユアン王子はそっと抱いて座らせる。少し言い淀んだあと、ユアン王子はスッと息を吸ってから口火を切った。
「エルマ。君の母親は何も悪くはない」
そう切り出したユアン王子の話はこうだ。
私がラニマール公爵家の娘? なんでそんな変な事を言い出したのだろう。
「私は使用人の娘です。母はもう亡くなりましたが、ラニマール公爵家の奥様ではありません」
あぁ、そうか。わかった。ユアン王子は最後に私をからかっているだけなのか。こんな悪趣味な冗談を言う人だったなんて思わなかった。
私は引きつった笑みをこぼす。
「処刑前に私をからかったおつもりですか? それとも死への気を紛らわそうと? どのみち、私には面白くありません」
「からかったつもりも、冗談を言ったつもりもない」
見上げたユアン王子は真剣な瞳で私を見下ろしてくる。
「お前はラニマール公爵家の娘なんだよ」
「……どういうことですか?」
ユアン王子の瞳から、ふざけているようには見えなかった。
だとしたら、私は本当にラニマール公爵家の血を引いているというの?
混乱して思わず額を抑えると、ユアン王子はその手を優しくどかして覗き込んできた。優しい……私の知っているユアン王子の瞳。
「エルマの父親はどんな人だった?」
「父……ですか? ……えっと、父は私が3つの頃に亡くなりました。父の記憶はありませんが、優しい人だったと母から聞いています」
父は料理人だったと聞いたことがある。母と結婚してからは街の食堂で働いていた。裕福ではなかったが、つつましく幸せに暮らしていたと……。そんな父は私が3つの時に事故で亡くなったのだ。
「もしかして、父か母がラニマール家の親戚だったんですか?」
両親の親戚に会ったことはない。話を聞いたこともなかったが、可能性としてはあり得る。父か母がラニマール公爵家の血筋だったとしたら納得できる。
しかし、ユアン王子はゆっくりと首を横に振った。
「違う」
「? 違うって……、どういうことですか?」
益々意味がわからなくて首を傾げる。すると、ユアン王子は少し言いにくそうに、どこか苦しげに告げた。
「エルマの本当の父親は……、ラニマール侯爵なんだ」
「え……」
言葉を失った。
今、ユアン王子はなんて言った? 私の本当の父親が……、ラニマール侯爵? どういうこと?
もう一度ユアン王子を見あげるが、真剣な顔は変わらない。混乱した私は不意に苦笑が漏れた。
「な、何を言い出したかと思えば……。ふざけるのも大概にして下さい。父親がラニマール侯爵なわけないじゃないですか。私の父は3歳までいたんですよ? それはラニマール侯爵ではありませんでした」
父の明確な記憶はないが、母の話や微かに覚えている父はラニマール侯爵などではない。もっと優しくて穏やかな雰囲気の人だった。
侯爵家でも、私を娘のように扱うことはなかったし、そんな素振りは微塵も感じられなかった。私はただの使用人だった。
もし、私が娘ならもう少し特別扱いをしたり、優しくしてくれるのではないか?
ラニマール公爵は、私が悪戯をしたジュアナお嬢様の身代わりだとわかりながら、見せしめの様に私を強く叱責するような人だった。
父親ならそんなことするだろうか?
あり得ない。
「でたらめを言わないで下さい」
「本当のことだ。ちゃんと調べもついている。王宮の調査団が徹底的に調べたんだ。間違いはない」
「そんな……」
愕然として言葉が出てこない。
待って。ユアン王子の言う通り、ラニマール公爵が本当の父親だとしたら、3歳の頃に亡くなった父は偽物だったの? 不倫? 母は父を裏切っていた? ラニマール公爵は私を娘だと知っていたのだろうか? 知っていて、あのような仕打ちをしていたのだろうか?
「ちゃんと説明するから」
わけがわからなくなり混乱して顔を覆う私の肩を、ユアン王子はそっと抱いて座らせる。少し言い淀んだあと、ユアン王子はスッと息を吸ってから口火を切った。
「エルマ。君の母親は何も悪くはない」
そう切り出したユアン王子の話はこうだ。



