お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

「偽っていない」

もう一度ゆっくりと言うユアン王子に、私は戸惑って動揺した。
言っている意味が分からない。

「な、何を言っているんですか? お忘れですか!? 私はラニマール家の使用人です! ただの平民。それともわざとそう言って私を追い詰めていらっしゃるんですか!? 死なせる前に楽しんでいる!? だとしたら意地悪過ぎます!」

最期まで私を苦しめようとしているの!?
そんな人だったなんて……。

もう涙は止まらなかった。本当は泣くつもりはなかった。でも、一度堰を切った涙は止まらない。
震えてなく私の腕を、ユアン王子は掴んだままだ。

「私はジュアナお嬢様だと偽って、ユアン王子と結婚しようとしたんです! ただの使用人がなりすましたんですよ! 偽っていたんです!」
「でも、それはお前が望んだことではないだろう?」
「だとしても、やってしまった事実は変わりありません。理由はどうであれ、私は罰せられる身なんです!」

経過はどうであれ、私がしたことは咎められる事実なのだ。
なのに身分を偽っていないとか訳の分からないことを……。

しかし、ユアン王子は涙が伝う私の頬をそっと撫でた。そのあまりにも優しい触れ方にビクッと肩が震える。

「ジュアナと名乗ったのは、確かに問題かもな」

しかし、とユアン王子は続ける。

「お前は逃げたジュアナの代わりに俺に嫁いできたんだ。ラニマール公爵家の次女として。だからなんの問題もない」
「え……?」

今、なんて言った……? ラニマール家の……次女? 侍女じゃなくて?

ユアン王子の言う意味がわからず、ポカンとしてしまう。私の表情を見て、ユアン王子は苦笑した。

「やはり、お前は何も知らなかったんだな」
「知らないって、何をですか?」
「お前はラニマール公爵家の娘なんだよ」

私はユアン王子の言っている言葉がさっぱりわからなかった。