翌日。
私はいつもの様に、ユアン王子からのランチのお誘いをコーラン様から受けた。
正直、ユアン王子とはあまり顔を合わせたくはないがそうは言ってられない。むしろ、普段忙しいユアン王子とゆっくり話せるのはこの機会しかないのだから、本当のことを話すチャンスなのかもしれない。
頑張れ私!
部屋の鏡を見ながら軽く頬を叩き、母の形見の指輪をそっと撫でる。
お母さん、私頑張るよ。きっとユアン王子は、私が本物のジュアナお嬢様ではないと知ったら、激怒して処刑を命じるかもしれない。あの冷たい瞳で私を見るかもしれない。成りすました私を軽蔑し、酷い言葉を投げかけるかもしれない。
想像するだけで身震いがする。
私の心は耐えられるかしら……?
愛してしまった人にそんな態度を取られたら深く傷つくだろう。
でも、本当のことを言わないと偽りの世継ぎを産んでしまうことになる。
この国の王族の血が……、私のような使用人の血で怪我されてしまう。それだけは……!
それだけはどうしても耐えられそうにない。罪悪感を感じながら、偽りの身分で、子どもにも私自身を偽って生きていくなんて無理だった。
精神的に耐えられないから。
だから……。
言うって決めたの。
「きっと悲しんでいる間にお母さんのところへ行けるのかもしれないわね」
本当は、最期に見る景色はユアン王子の優しい笑顔が良かったけれど、それは叶わなくなりそう。
ポロっと一粒だけ涙がこぼれる。でも、泣いてはいけない。私にはそんな資格がない。
少しでもお城で良い生活ができて、幸せな時が過ごせたのだからそれだけで十分ではないか。
そっと目を閉じ、深呼吸をした私は覚悟を決めてユアン王子の元へと向かった。
いつものようにテラスのテーブルには食べやすい美味しそうな食事が並んでいる。ふと、昨日の夜のシェフの言葉を思い出して頬が緩んだ。
これもユアン王子が作ってくれたのかしら?
どれも上手に仕上がっており本当にプロが作ったかのようだ。言われなければユアン王子が作ったなどとは誰も思うまい。
冷徹なくせに料理が好きだなんて、本当に変わった王子様。
「どうした? 座らないのか?」
「あ、いえ美味しそうだなと思って眺めておりました」
微笑むとどこか照れくさそうにするユアン王子。やはりそうかと確信する。ただそれを指摘するつもりはない。
これが私の最期の食事になるかもしれない。最後がユアン王子の作ってくれたご飯で良かったわ。寂しさと喜びに複雑になりながらも、この日はいつにも増してゆっくりと味わって食事を楽しんだ。
そうして、ランチタイムも終盤になったころ。
「どうかしたのか? 今日は大人しいな」
口数が少ない私を気遣うようにユアン王子が覗き込んできた。
あぁ、もう覚悟を決めなければ。
真実を話すなら今しかない。緊張で心臓が口から飛び出そうだったが、私は意を決して口を開いた。
「ユアン王子…大切なお話があります」
「話? なんだ?」
「実は、私は…」
震える唇で青ざめながら顔を上げた瞬間――。
私はいつもの様に、ユアン王子からのランチのお誘いをコーラン様から受けた。
正直、ユアン王子とはあまり顔を合わせたくはないがそうは言ってられない。むしろ、普段忙しいユアン王子とゆっくり話せるのはこの機会しかないのだから、本当のことを話すチャンスなのかもしれない。
頑張れ私!
部屋の鏡を見ながら軽く頬を叩き、母の形見の指輪をそっと撫でる。
お母さん、私頑張るよ。きっとユアン王子は、私が本物のジュアナお嬢様ではないと知ったら、激怒して処刑を命じるかもしれない。あの冷たい瞳で私を見るかもしれない。成りすました私を軽蔑し、酷い言葉を投げかけるかもしれない。
想像するだけで身震いがする。
私の心は耐えられるかしら……?
愛してしまった人にそんな態度を取られたら深く傷つくだろう。
でも、本当のことを言わないと偽りの世継ぎを産んでしまうことになる。
この国の王族の血が……、私のような使用人の血で怪我されてしまう。それだけは……!
それだけはどうしても耐えられそうにない。罪悪感を感じながら、偽りの身分で、子どもにも私自身を偽って生きていくなんて無理だった。
精神的に耐えられないから。
だから……。
言うって決めたの。
「きっと悲しんでいる間にお母さんのところへ行けるのかもしれないわね」
本当は、最期に見る景色はユアン王子の優しい笑顔が良かったけれど、それは叶わなくなりそう。
ポロっと一粒だけ涙がこぼれる。でも、泣いてはいけない。私にはそんな資格がない。
少しでもお城で良い生活ができて、幸せな時が過ごせたのだからそれだけで十分ではないか。
そっと目を閉じ、深呼吸をした私は覚悟を決めてユアン王子の元へと向かった。
いつものようにテラスのテーブルには食べやすい美味しそうな食事が並んでいる。ふと、昨日の夜のシェフの言葉を思い出して頬が緩んだ。
これもユアン王子が作ってくれたのかしら?
どれも上手に仕上がっており本当にプロが作ったかのようだ。言われなければユアン王子が作ったなどとは誰も思うまい。
冷徹なくせに料理が好きだなんて、本当に変わった王子様。
「どうした? 座らないのか?」
「あ、いえ美味しそうだなと思って眺めておりました」
微笑むとどこか照れくさそうにするユアン王子。やはりそうかと確信する。ただそれを指摘するつもりはない。
これが私の最期の食事になるかもしれない。最後がユアン王子の作ってくれたご飯で良かったわ。寂しさと喜びに複雑になりながらも、この日はいつにも増してゆっくりと味わって食事を楽しんだ。
そうして、ランチタイムも終盤になったころ。
「どうかしたのか? 今日は大人しいな」
口数が少ない私を気遣うようにユアン王子が覗き込んできた。
あぁ、もう覚悟を決めなければ。
真実を話すなら今しかない。緊張で心臓が口から飛び出そうだったが、私は意を決して口を開いた。
「ユアン王子…大切なお話があります」
「話? なんだ?」
「実は、私は…」
震える唇で青ざめながら顔を上げた瞬間――。



