お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

城へ帰ると、どっと疲れが出てベッドに倒れ込んでしまった。

「お疲れですよね。今ハーブティーを入れますからね」

リリーさんは含み笑いをしながらそそくさとお茶を入れてくれた。
なんだろう、その笑みが気になる。生暖かいというか……、気遣うというか……。

「リリーさん? どうかしたんですか?」
「何がですか?」
「いや、なんか私を見る目が……、その……」

どういっていいかわからず言葉が濁ると、リリーさんは小さくフフっと笑う。

「そんな、私の口からはとても言えたことではございませんよ」
「余計気になるんですが」

そう返すと、リリーさんは微笑みながら「では恐れながら」と少し声を潜め、ベッドに腰かける私の隣に座った。

「ユアン王子と夜を過ごしたとお聞きしました」
「夜?」
「はい! いやぁ、まさかあの冷徹の王子がジュアナ様にメロメロだったなんて驚きましたよ。あんな表情をされるなんて思いもしませんでしたから、使用人全員驚愕です。しかも夜はジュアナ様のお部屋をご訪問されていたと、見た使用人が話しておりました。素敵な夜だったのでしょうね」

リリーさんは込みあがってくる笑みを押さえられないという風に、口元を押さえながら一気にまくし立てた。
あんなに冷徹の王子を怖がっていたのに、昨日の夕飯時の一件でその気持ちは覆ったらしい。

テンションが上がっているリリーさんとは対照的に私の気持ちは上がらない。

ユアン王子からのキスは嬉しかった。自分のことを話してくれて、私に理解してもらおうとした気持ちも。
ユアン王子が私を想ってくれていたことは天にも昇るほど幸せだったわ。このまま続けばよいと願うほどに……。

でも、そうはいかない。

これ以上関係が進む前に、私は事実を告げなければならないのだから。

この命を懸けて。

「ジュアナ様?」
「あ、いえ……。皆さんが思うほど何かあったわけではなくて……。すみません」

苦笑いすると、「そうなんですか」と眉を下げられた。残念に思ったのだろう。少し申し訳なく思う。

「まぁ、これからですよ!」

前向きに気持ちを切り替えたリリーさんに心の中で謝りながら曖昧に笑みを返した。