お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

翌日、午前中の間に城へ戻ることになった。

朝食の時間はシェフに作らせ、テラスでエルマと二人きりでとったのだが空気が微妙に重い。エルマも笑顔が見られず、俯いていることが多かったのだ。

昨日のキスは失敗だった。

それは痛いほどわかっているが、過ぎたことはどうしようもない。ここからどう挽回するかなのだが、エルマ自身が俺と会話をする気がないように見えてこっそりため息をつく。

控えていたコーランも苦笑いするしかないようだ。

辛かったのは帰りの馬車だ。
何も知らない使用人らは生暖かい目で俺たちが二人で馬車に乗り込むところを眺めているが、本音は二人きりは今朝同様に少々気まずい。しかもここにはコーランもいない。

何を話すべきかて……。

冷徹の王子と言われた俺が、そんなことに迷うなんて思いもしなかった。使用人らも重鎮らも想像がつかないだろう。

「疲れただろう。帰ったら少しゆっくりするといい」
「はい……」

エルマは外を眺めたまま小さく返事をする。

いったい今何を考えている?

問いただしたい気持ちが沸き上がるが、唾と共にそれを飲み込む。少しづつ、また距離を縮めていくしかないのか。仕方がない。

しかし、そんな悠長な考えを持っていたあの時の自分を殴ってやりたいと思うのはもう少し後のこと。


そして、エルマの覚悟を知るのももう少し後の事だった。