お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

意気消沈のまま自室へ戻ると、部屋の前でコーランが待っていた。俺の表情を見て苦笑を漏らす。

「夜這い失敗ですか」
「夜這いとかいうな。話をしに行っただけだ」
「その割には浮かない顔をしていますね。襲おうとして拒否されましたか」

2人で俺の部屋の中に入りながら、コーランに軽口に小さく舌打ちをする。襲おうとはしていないが、拒否されたことには変わりないだろう。コーランの言葉は胸に刺さった。
深くため息をつきながら、コーランを振り返る。

「で? 何か用か?」
「昼間のお話の続きです」

コーランは真剣な表情になりそう告げた。
昼間、エルマといい雰囲気の時に報告があると邪魔をしてきた。聞いた話はまだ途中経過だったが、その続報ということか。

「密偵によりますと……」

コーランの報告に眉を顰める。
小声で話し出される内容に自然と舌打ちと小さな悪態が口から洩れた。こんな時に面倒な内容だな。

「わかった。城に戻ったら動きがあるだろう。しばらくは外出の公務を避ける」
「承知いたしました。その方がよろしいですね。スケジュールを変更しておきます」

俺はソファーにもたれ掛かりながら大きなため息がついた。エルマの事、報告の内容、全てにおいてのため息である。

叶うならあんな触れるだけのキスではなく、もっと深く味わいたかった。あそこでエルマが泣かなければ理性が外れていただろう。

やっと手に入れたのだ。状況はどうであれ、このチャンスは決して逃さない。と、すると報告された問題に関しては早急に片づけなければならないな。

「お顔が冷徹の王子になっておりますよ」

コーランの指摘に目線だけ上げる。自分が今、どれだけ冷たい顔をしているのかは自覚がある。

「俺はエルマのためならいくらでも冷徹になれるよ」

その声は冷えするほど冷たく、感情がないものであった。