「ここに連れてきた使用人たちは、長年仕えてくれた信用ある者たちばかりだ。今さら俺の振る舞い一つで何か変わるとは思えん」
私の前での完全なる甘さはないが、言葉の端や声に優しさを感じる。
長年仕えてきた使用人たちも、その優しい王子に驚いているようだけれど……。でも今の一言は信頼されていると言われているのも同然で、使用人としては嬉しい限りよね。
涙ぐんでいる使用人たちもいてユアン王子の言葉がどれほど響いたのかがよくわかる。
私も使用人だったんだもの。そんなこと言われたら嬉しくて泣いてしまうだろう。
「そうですか。それなら私も安心です」
フフっと微笑むとユアン王子も目を柔らかくする。
その後、私も使用人たちに交じって気軽に食事をしたが、皆誰もが気遣いある優しい者ばかりであった。ユアン王子が信用しているというだけはある。
すると、側にいたやや年配の侍女がそっと声をかけてきた。
「ジュアナ様がいらっしゃって良かったです」
「え?」
「ユアン王子様があんな柔らかい表情をされるなんて……。滅多にありません。常に気を張って、私たちの前でも隙を見せない様にしているお姿ばかりを見てきましたから。常にこんな風に雰囲気が柔らかい王子様を見られて嬉しい限りです」
「別に私のおかげでは……」
首を振ると、侍女は私の手をそっと握った。
「あなた様のおかげですよ。王子様の御心を救ってくださり、ありがとうございます」
私が……、ユアン王子の心を救う?
大げさなと思う反面、そうかもしれないと思うほどユアン王子の変化は目に見えてわかった。
もしかしたらまた冷徹な王子に戻るかもしれないけれど、とは言えず、ただ微笑むにとどめた。すると、今度はシェフがお皿を持ちながら近寄ってきた。
「ジュアナ様、これは地元野菜で作られた肉野菜煮でございます。とても美味しくできたんですよ。ユアン王子様は子供の頃からこれがお好きだったんです」
シェフが嬉しそうに目を細めながら説明してくれる。差し出された野菜を一口食べて、私は顔をほころばせた。
「本当だ! とても美味しいです! シェフは本当に腕がよろしいんですね。毎食、とても楽しみにしているんですよ」
「ハハ、ありがとうございます。ただ、昼食だけは私が作った物ではございませんよ」
「他の方が作られているのですか?」
疑問を口にすると、シェフは少し気まずそうな顔をした。
「えぇ……。たぶんですが。私ども厨房の者はその時間は休憩をいただいておりますので詳しくは……」
どうもはぎれが悪い。首を傾げると、シェフがこっそりと小声で教えてくれた。
「その方が作られる時は、ジュアナ様と王子様が昼食をとられる直前です。それ以外は私どもが作っておりますが……。その、一度だけその方が作られているお姿を拝見したことがあります」
さらにシェフは声を落とした。
「ユアン王子様だったんですよ」
「え? 厨房に居たのが?」
「はい。サンドウィッチを作っておられました。しかも手際よく……」
シェフの話に言葉を失う。
ちょっと待って……。ということは、まさかあの二人のランチの時はいつもユアン王子が食事を作ってくれていたということ!? 一体どうして……!?
「ユアン王子様はとても器用な方ですからね。昔、戦地訓練に参加された時、ユアン王子様が食事担当の時はとても美味しかったと聞いたことがあります。もしかしたらですが、料理がお好きなのかも……」
シェフは柔らかい笑みをこぼす。
「あ、このことは内密にお願いいたしますね。私がお姿を拝見したなど知れたらどうなる事か……」
「もちろんです。教えてくださりありがとうございます」
そうお礼を言いつつも、少し胸がドキドキしていた。
だって、今までのあの食べやすい食事は王子自らが作ってくれていたということ。なんで? 私のために? それともただ食べやすい食事が作りたかっただけ? 料理が好きなの? だからあんなに紅茶を入れるのが美味いの?
聞きたいことがたくさんある。でも、それは今聞けない。
もし、私のためだとしたら……?
そう考えると、胸の奥がじんわりと温かく満たされる感じがした。
私の前での完全なる甘さはないが、言葉の端や声に優しさを感じる。
長年仕えてきた使用人たちも、その優しい王子に驚いているようだけれど……。でも今の一言は信頼されていると言われているのも同然で、使用人としては嬉しい限りよね。
涙ぐんでいる使用人たちもいてユアン王子の言葉がどれほど響いたのかがよくわかる。
私も使用人だったんだもの。そんなこと言われたら嬉しくて泣いてしまうだろう。
「そうですか。それなら私も安心です」
フフっと微笑むとユアン王子も目を柔らかくする。
その後、私も使用人たちに交じって気軽に食事をしたが、皆誰もが気遣いある優しい者ばかりであった。ユアン王子が信用しているというだけはある。
すると、側にいたやや年配の侍女がそっと声をかけてきた。
「ジュアナ様がいらっしゃって良かったです」
「え?」
「ユアン王子様があんな柔らかい表情をされるなんて……。滅多にありません。常に気を張って、私たちの前でも隙を見せない様にしているお姿ばかりを見てきましたから。常にこんな風に雰囲気が柔らかい王子様を見られて嬉しい限りです」
「別に私のおかげでは……」
首を振ると、侍女は私の手をそっと握った。
「あなた様のおかげですよ。王子様の御心を救ってくださり、ありがとうございます」
私が……、ユアン王子の心を救う?
大げさなと思う反面、そうかもしれないと思うほどユアン王子の変化は目に見えてわかった。
もしかしたらまた冷徹な王子に戻るかもしれないけれど、とは言えず、ただ微笑むにとどめた。すると、今度はシェフがお皿を持ちながら近寄ってきた。
「ジュアナ様、これは地元野菜で作られた肉野菜煮でございます。とても美味しくできたんですよ。ユアン王子様は子供の頃からこれがお好きだったんです」
シェフが嬉しそうに目を細めながら説明してくれる。差し出された野菜を一口食べて、私は顔をほころばせた。
「本当だ! とても美味しいです! シェフは本当に腕がよろしいんですね。毎食、とても楽しみにしているんですよ」
「ハハ、ありがとうございます。ただ、昼食だけは私が作った物ではございませんよ」
「他の方が作られているのですか?」
疑問を口にすると、シェフは少し気まずそうな顔をした。
「えぇ……。たぶんですが。私ども厨房の者はその時間は休憩をいただいておりますので詳しくは……」
どうもはぎれが悪い。首を傾げると、シェフがこっそりと小声で教えてくれた。
「その方が作られる時は、ジュアナ様と王子様が昼食をとられる直前です。それ以外は私どもが作っておりますが……。その、一度だけその方が作られているお姿を拝見したことがあります」
さらにシェフは声を落とした。
「ユアン王子様だったんですよ」
「え? 厨房に居たのが?」
「はい。サンドウィッチを作っておられました。しかも手際よく……」
シェフの話に言葉を失う。
ちょっと待って……。ということは、まさかあの二人のランチの時はいつもユアン王子が食事を作ってくれていたということ!? 一体どうして……!?
「ユアン王子様はとても器用な方ですからね。昔、戦地訓練に参加された時、ユアン王子様が食事担当の時はとても美味しかったと聞いたことがあります。もしかしたらですが、料理がお好きなのかも……」
シェフは柔らかい笑みをこぼす。
「あ、このことは内密にお願いいたしますね。私がお姿を拝見したなど知れたらどうなる事か……」
「もちろんです。教えてくださりありがとうございます」
そうお礼を言いつつも、少し胸がドキドキしていた。
だって、今までのあの食べやすい食事は王子自らが作ってくれていたということ。なんで? 私のために? それともただ食べやすい食事が作りたかっただけ? 料理が好きなの? だからあんなに紅茶を入れるのが美味いの?
聞きたいことがたくさんある。でも、それは今聞けない。
もし、私のためだとしたら……?
そう考えると、胸の奥がじんわりと温かく満たされる感じがした。



