お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

「あの、夕飯っていつもの様に部屋ですか? それとも食堂で?」
「食堂と聞いています」

ということは、使用人たちも側に控えるのだろうか?
いつもはマナーなど怪しまれないように部屋食べをしているが、場所的にもそう言うわけにはいかないのかな。
少し緊張するけど、だいぶ慣れたから大丈夫だとは思うけど……。

そんな心配をしていたが、ユアン王子は使用人たちも一緒に気軽に食べられるようにと、立食的な状態にして大皿の食事をいくつもテーブルに並べる様に言いつけたらしい。
そんなことは今まででもなかったことで、集められた使用人たちはみな戸惑いを隠せずに立ち尽くしていた。

「今回はいつも頑張っているみなさんへ、ユアン王子からの計らいです。楽しくワイワイと食事を楽しみましょう」

コーラン様の一声で皆がホッとした顔つきになる。

「驚きました。ユアン王子様がそんなことをなさるなんて思いもしませんでしたから、私たちクビになるのかと思ってしまいましたよ」

リリーさんの苦笑に私も微笑む。そう思っても不思議ではないだろう。 

「どういう風の吹き回しだろう」「王子様は体調でも悪いのか?」など囁かれてもいる。

当の本人は少し離れた場所の椅子に座って、気にした様子もなくのんびりワインなどを飲んでいた。

本当に今回のユアン王子はどうしたのだろう。明らかに違う。
でも、使用人たちを見るユアン王子の目が心なしか穏やかに見える。纏う空気が柔らかいもののようで、使用人たちもそれを感じるのかホッとしているみたいだ。

あえてそうしているのかしら?

ユアン王子の側へ行くと、目線を上げて「どうした?」と優しく問いかけてきた。

2人でいるときの声だ。

もちろん、使用人たちはそんな声を聞いたことがないのだろう。多くの人が目を丸くして振り返る。

「今日のユアン王子はお優しくてみんなが驚いております」
「たまにはいいだろう」 

たまにはではない。使用人たちには初めてのことだ。背中越しに戸惑っているのが大いにわかるし、それを見てコーラン様が笑いをこらえているのがよくわかる。

キャラ変でもしたのかしら。それとも冷徹のままだと疲れた?

どちらにせよユアン王子が変わったのは目に見えている。
それをどう受け入れられていくかだろう。