お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

ユアン王子が呟いた言葉を確かめることができず、その日の夕方を迎えた。

午前中は二人で庭の散策、ランチはいつものように食べやすいものを二人っきりで。午後はテラスでのんびりしたり、近くの王宮管理の牧場へと足を延ばしてみたり……。

うん、楽しかったよ。ランチも美味しかったし、牧場も色んな動物がいて触れ合えて楽しんだし……。

久しぶりに楽しいと感じていたと思う。でも、でもさ。

楽しかったけど、二人きりになった瞬間のユアン王子の態度が甘くて甘くて溶けてしまいそうで……。コーラン様以外の使用人が近くにいるといつも通りだからこそ、そのギャップに頭が追い付かないの。

牧場でも馬の背中に乗る時は完璧なエスコート。私が落ちないように常に気遣ってくれているし、優しく声をかけてくれるし……。
馬も心なしか驚いていたんじゃないかな。

私の戸惑いなど感じているくせに、ユアン王子はそんなのお構いなしだ。

「一体なにが起こっているというの……」

別邸の自室へ戻ると、なんだかぐったりしてしまいソファーに倒れ込んでしまった。

それにユアン王子が呟いた言葉も頭から離れないでいる。
ただの聞き間違い? はっきりは聞こえなかったから空耳だったのだろうか。だとしたら、王子はあの時何を言ったのだろう。

「大丈夫ですか? お疲れですね。まぁあの王子様のお側にずっといらっしゃるのも気を張って疲れますよね」

リリーさんが気づかわし気な顔で紅茶を入れてくれる。

ん? どういうこと? と思ったが、使用人たちの前ではユアン王子は表情を無くした冷たい雰囲気をまとった王子のままだ。
私の前で豹変して甘くなるユアン王子を知らないのだろう。

「いや……、気を張るとはまた違くて……。ギャップというかなんというか……」

もごもごと話す私に軽く首を傾げるリリーさん。

「この後はお夕飯ですからね。夕飯はいつものシェフが地元の食材で腕を振るってくださいます。お昼はここの地元のシェフが作ってくださったんですよね? 恥ずかしがり屋だからと人払いされたとか。いかがでしたか?」
「え……? そうだったんですか?」
「はい、そう聞きましたけど?」

それを聞いて私が首をひねった。
地元のシェフ? そんな話は聞いていない。ランチメニューはいつもの食べやすいもので、味もいつもと同じとても美味しいものだった。特別に変わった感じは見られなかったけど……。

あとでコーラン様にでも聞いてみよう。