凄く視線を感じる……。
いくらか態度が柔らかいからと言って、そんなに会話が続くわけでもなく。沈黙時は外を眺めていた。しかし、目の前に座るユアン王子は外を眺めるどころか、ずっと私を見つめている……気がする。
レース越しでも感じる視線に耐えきれなくなってきた私はユアン王子に顔を向けた。
「あの、何か?」
「何かとは?」
「ずっと私の方をご覧になっているご様子でしたので……。なにか顔についてますか?」
まさかジュアナでないと気が付いたか?
少しドキドキしながらもそう問いかけると、ユアン王子がフッと笑みをこぼした。……笑みをこぼした?
「いや? 婚約者を眺めるのは別に悪いことではないだろう?」
まぁ、確かに悪いことではない、が。
……誰これ? え? やだ、この人誰? 絶対にユアン王子ではない! 替え玉? 刺客? 本物の冷徹の王子は一体どこへ? だって普段のユアン王子ならこんないい方はしない! こんな甘い声で穏やかに微笑みながら言ったりはしない! というか言われたことがない! つまり別人!?
「どうした?」
「いえ……、一度コーラン様とお話がしたくて」
コーラン様ならどういうことか知っているだろう。まさかとは思うが……、王子の朝食に何かしらの毒を盛られた可能性もある。その影響ということもあり得るのだ。早急に王子のご様子について報告せねば。
挙動不審になる私に、ユアン王子は冷めた目を向けた。
あ……、いつものユアン王子だ。
「俺よりコーランと話がしたいのか」
違う、やっぱりこの人は別人だ!
どうしたものかと焦っていると、馬車の扉をトントンと軽く叩かれた。目を向けると、いつの間にか止まっていた馬車の外でコーラン様が笑いをこらえて立っている。
「コーラン様、あのユアン王子のご様子が……!」
「ジュアナ様、ご安心ください。この方は紛れもなく本物でございます。変な物も食べてはおりません」
平然と不躾な物言いをされ、目の前のユアン王子は不貞腐れたような顔つきを見せた。
ほら、やっぱり違う! いつものユアン王子はこんな子供のような表情はしない。
私が無言でコーラン様に訴えると、それでも笑いながら大丈夫だと言われてしまった。一番の側近であるコーラン様がそう言うなら……。
いぶかしげに思いながらも渋々納得する。
「それよりも別邸へ到着いたしました。ユアン王子、お顔を引き締めてお降りくださいませ」
含むいい方のコーラン様を軽く睨みつけるが、ユアン王子はスッと背筋を伸ばすと顔つきを変えた。そこにはいつも見かけるあの冷徹の王子の異名をもつ冷めた目と顔のユアン王子がそこにいたのだ。
凄い変わりよう……。本物だったわ……。
その切り替えに唖然としつつも、では先ほどのユアン王子は一体何なのか。
まさか、私の前だから……?
あれが表面的なユアン王子でないとしたら……。私に素顔をほんの少し見せてくれたということだろうか。
だったらどうして……?
いや、以前からユアン王子は時々そんな様子を見せてくれていた。私自身それは感じており、喜んでいたではないか。
あぁ、どうしよう。
胸がキュンと苦しくなる。ダメなのに。報われないのに。なのに、こういう時どうしても嬉しさが優ってしまうのだ。
もっともっと素顔が知りたい。ユアン王子の心が知りたい。その欲求はどんどん大きくなるばかり。
欲張りになっていく自分を浅ましく思いながら。
いくらか態度が柔らかいからと言って、そんなに会話が続くわけでもなく。沈黙時は外を眺めていた。しかし、目の前に座るユアン王子は外を眺めるどころか、ずっと私を見つめている……気がする。
レース越しでも感じる視線に耐えきれなくなってきた私はユアン王子に顔を向けた。
「あの、何か?」
「何かとは?」
「ずっと私の方をご覧になっているご様子でしたので……。なにか顔についてますか?」
まさかジュアナでないと気が付いたか?
少しドキドキしながらもそう問いかけると、ユアン王子がフッと笑みをこぼした。……笑みをこぼした?
「いや? 婚約者を眺めるのは別に悪いことではないだろう?」
まぁ、確かに悪いことではない、が。
……誰これ? え? やだ、この人誰? 絶対にユアン王子ではない! 替え玉? 刺客? 本物の冷徹の王子は一体どこへ? だって普段のユアン王子ならこんないい方はしない! こんな甘い声で穏やかに微笑みながら言ったりはしない! というか言われたことがない! つまり別人!?
「どうした?」
「いえ……、一度コーラン様とお話がしたくて」
コーラン様ならどういうことか知っているだろう。まさかとは思うが……、王子の朝食に何かしらの毒を盛られた可能性もある。その影響ということもあり得るのだ。早急に王子のご様子について報告せねば。
挙動不審になる私に、ユアン王子は冷めた目を向けた。
あ……、いつものユアン王子だ。
「俺よりコーランと話がしたいのか」
違う、やっぱりこの人は別人だ!
どうしたものかと焦っていると、馬車の扉をトントンと軽く叩かれた。目を向けると、いつの間にか止まっていた馬車の外でコーラン様が笑いをこらえて立っている。
「コーラン様、あのユアン王子のご様子が……!」
「ジュアナ様、ご安心ください。この方は紛れもなく本物でございます。変な物も食べてはおりません」
平然と不躾な物言いをされ、目の前のユアン王子は不貞腐れたような顔つきを見せた。
ほら、やっぱり違う! いつものユアン王子はこんな子供のような表情はしない。
私が無言でコーラン様に訴えると、それでも笑いながら大丈夫だと言われてしまった。一番の側近であるコーラン様がそう言うなら……。
いぶかしげに思いながらも渋々納得する。
「それよりも別邸へ到着いたしました。ユアン王子、お顔を引き締めてお降りくださいませ」
含むいい方のコーラン様を軽く睨みつけるが、ユアン王子はスッと背筋を伸ばすと顔つきを変えた。そこにはいつも見かけるあの冷徹の王子の異名をもつ冷めた目と顔のユアン王子がそこにいたのだ。
凄い変わりよう……。本物だったわ……。
その切り替えに唖然としつつも、では先ほどのユアン王子は一体何なのか。
まさか、私の前だから……?
あれが表面的なユアン王子でないとしたら……。私に素顔をほんの少し見せてくれたということだろうか。
だったらどうして……?
いや、以前からユアン王子は時々そんな様子を見せてくれていた。私自身それは感じており、喜んでいたではないか。
あぁ、どうしよう。
胸がキュンと苦しくなる。ダメなのに。報われないのに。なのに、こういう時どうしても嬉しさが優ってしまうのだ。
もっともっと素顔が知りたい。ユアン王子の心が知りたい。その欲求はどんどん大きくなるばかり。
欲張りになっていく自分を浅ましく思いながら。



