この日突然、ユアン王子に別邸へと誘われた。
この城から馬車で一時間ほどの場所。西のはずれの森の一角が国の所有地であり、そこに別邸は立てられている。
暑い季節は避暑地として使うこともあるというが、まだそこまで暑い季節ではない。
伝えに来たコーラン様曰く、日差しが強くなってきたこの季節にはちょうど良いだろうとのことだった。
「予定は一泊です。ここは近いし、何かあればすぐに城には戻れる距離なので急なお泊りも心配ありません」
「一泊!?」
ニコニコと告げてくるが、コーラン様の表情とは反対に私は目を丸くした。
一泊って、そこの別邸へ泊まるってこと!? ユアン王子と私が!? まさか……。
先日の会話を思い出した。
国王陛下に触発されて、子作りしようだなんてことは……。
そう考えて顔色を失う。私の表情に気が付いたコーラン様が慌てて否定した。
「あの、変な意味はございません! 交流を深めようとのご提案で……」
「交流を……深める……!?」
「違くて! その、ユアン様はジュアナ様と親しくなりたいとお考えです。それはやらしい意味ではなく人として……。なので、寝室ももちろん別ですし、決して深い意味はございませんからご安心ください!」
必死にきっぱりと言うコーラン様をじっと見つめる。嘘はなさそうだが、実際はどうだかわからない。
ただ、まぁ夫婦となるのだしそう言う関係になってもおかしくはないけれど……。そうなったとき、私ではユアン王子の子供は産めない。
ということは、その時が王子に真実を告げるとき……。
そっと母の形見の指輪に触れる。
「大丈夫です。ユアン王子はそんな軽薄な人ではございませんよ」
まるで私の不安を見透かすかのように、コーラン様は安心させるように穏やかに話す。
そうね、大丈夫。コーラン様がそう言うなら心配はないはずよ、エルマ。まだ生きる猶予はある。
コーラン様には「承知いたしました」と返事をした。
しかし、そもそもそんなに長い時間、ユアン王子と過ごすのは出来れば避けたかった。
しかもどうやって過ごすの? ずっと二人でお喋りだなんて無理な話だわ。
ユアン王子と過ごすことへの気まずさもあるが、外に出るということは護衛の数も必然的に増える。私がジュアナではないとバレてしまう可能性も上がるのだ。
基本、勉強だと言って部屋にこもることが多い私は、意図的に他者との関りを極力させていた。
だから、今回のお誘いはあまり嬉しいものではなかった。
「しかし、ユアン王子もお忙しいのでは?」
コーラン様に遠回しにやんわりと行きたくない旨を伝えると、ニッコリ笑って「やらなければならない仕事は今日のうちに済ませるそうです」と返事を返された。
「そうですか」
私の含む意図に気が付かないほど呑気な官僚ではない。ということは、わかった上で強制参加を意味しているのだろう。
そう言われると、私なんかには何も言えない。
「承知いたしました。では明日」
渋々そう返事をするほかなかった。
返事はしたけどさぁ……。
「う~、行きたくないなぁ~……」
コーラン様が退室した後、ベッドの上でゴロゴロとぐずってみる。
「ばれたらどうしよう……」
ふかふかのベッドに顔を埋めながら呟く
コーラン様はあぁ言ったけど、もし明日、ユアン王子に求められたら…?
そう考えると、顔がカッと熱くなって赤くなるのを感じた。お腹の奥がじんわりとうずく感じがする。
性格はどうであれ、冷徹の王子であってもあの姿形に迫られたらときめかない女性などいないのではないだろうか。
冷たい視線におびえながらも、あの大きな手で触れられ、低く甘い声で囁かれたら…。
「そんなの……」
想像だけでドキドキと胸が高鳴る。
でも、きっとそうはならない。私はその状態になったらユアン王子のお手付きになる前に、真実を告げなければならないのだから。
愛のない状態で抱かれるよりも、綺麗なままの体で死ねる方が幸せなのか……。考えてもわからない。ただ、一つ言えるのは……。
「愛がなくてもユアン王子となら私は……」
一時の夢が見られたかもしれない。
この城から馬車で一時間ほどの場所。西のはずれの森の一角が国の所有地であり、そこに別邸は立てられている。
暑い季節は避暑地として使うこともあるというが、まだそこまで暑い季節ではない。
伝えに来たコーラン様曰く、日差しが強くなってきたこの季節にはちょうど良いだろうとのことだった。
「予定は一泊です。ここは近いし、何かあればすぐに城には戻れる距離なので急なお泊りも心配ありません」
「一泊!?」
ニコニコと告げてくるが、コーラン様の表情とは反対に私は目を丸くした。
一泊って、そこの別邸へ泊まるってこと!? ユアン王子と私が!? まさか……。
先日の会話を思い出した。
国王陛下に触発されて、子作りしようだなんてことは……。
そう考えて顔色を失う。私の表情に気が付いたコーラン様が慌てて否定した。
「あの、変な意味はございません! 交流を深めようとのご提案で……」
「交流を……深める……!?」
「違くて! その、ユアン様はジュアナ様と親しくなりたいとお考えです。それはやらしい意味ではなく人として……。なので、寝室ももちろん別ですし、決して深い意味はございませんからご安心ください!」
必死にきっぱりと言うコーラン様をじっと見つめる。嘘はなさそうだが、実際はどうだかわからない。
ただ、まぁ夫婦となるのだしそう言う関係になってもおかしくはないけれど……。そうなったとき、私ではユアン王子の子供は産めない。
ということは、その時が王子に真実を告げるとき……。
そっと母の形見の指輪に触れる。
「大丈夫です。ユアン王子はそんな軽薄な人ではございませんよ」
まるで私の不安を見透かすかのように、コーラン様は安心させるように穏やかに話す。
そうね、大丈夫。コーラン様がそう言うなら心配はないはずよ、エルマ。まだ生きる猶予はある。
コーラン様には「承知いたしました」と返事をした。
しかし、そもそもそんなに長い時間、ユアン王子と過ごすのは出来れば避けたかった。
しかもどうやって過ごすの? ずっと二人でお喋りだなんて無理な話だわ。
ユアン王子と過ごすことへの気まずさもあるが、外に出るということは護衛の数も必然的に増える。私がジュアナではないとバレてしまう可能性も上がるのだ。
基本、勉強だと言って部屋にこもることが多い私は、意図的に他者との関りを極力させていた。
だから、今回のお誘いはあまり嬉しいものではなかった。
「しかし、ユアン王子もお忙しいのでは?」
コーラン様に遠回しにやんわりと行きたくない旨を伝えると、ニッコリ笑って「やらなければならない仕事は今日のうちに済ませるそうです」と返事を返された。
「そうですか」
私の含む意図に気が付かないほど呑気な官僚ではない。ということは、わかった上で強制参加を意味しているのだろう。
そう言われると、私なんかには何も言えない。
「承知いたしました。では明日」
渋々そう返事をするほかなかった。
返事はしたけどさぁ……。
「う~、行きたくないなぁ~……」
コーラン様が退室した後、ベッドの上でゴロゴロとぐずってみる。
「ばれたらどうしよう……」
ふかふかのベッドに顔を埋めながら呟く
コーラン様はあぁ言ったけど、もし明日、ユアン王子に求められたら…?
そう考えると、顔がカッと熱くなって赤くなるのを感じた。お腹の奥がじんわりとうずく感じがする。
性格はどうであれ、冷徹の王子であってもあの姿形に迫られたらときめかない女性などいないのではないだろうか。
冷たい視線におびえながらも、あの大きな手で触れられ、低く甘い声で囁かれたら…。
「そんなの……」
想像だけでドキドキと胸が高鳴る。
でも、きっとそうはならない。私はその状態になったらユアン王子のお手付きになる前に、真実を告げなければならないのだから。
愛のない状態で抱かれるよりも、綺麗なままの体で死ねる方が幸せなのか……。考えてもわからない。ただ、一つ言えるのは……。
「愛がなくてもユアン王子となら私は……」
一時の夢が見られたかもしれない。



