「ユアン王子殿下。聞いてらっしゃいますか?」
「聞いている。さっさと続けろ」
会議室で、初老の大臣が俺にそう聞いてきた。俺は資料を見つめたまま、ため息をつきながら冷たくそう言い放つ。
つれない態度の俺に不満げな顔の大臣はそのまま話を続けた。その表情に俺の顔がますます冷めていく。そんな俺の顔色を、その大臣以外は戦々恐々と見つめていた。
初老の大臣はずっとどうでもいいことで、他の大臣に絡んでは困らせていた。
バカバカしい……。
これでは会議が進まない。俺はため息をつくと口を開いた。
「この金額には不備がない。何度読んでも間違った記載はないのだからもういいだろう。次」
いつまでもグダグダと、災害担当大臣に絡んでいる初老の大臣に低い声でそう言い捨てた。災害担当大臣は口をはさんだ俺の言葉に、どこかホッとしたように少し表情を和らげる。
しかし、俺と目が合うと気まずそうに俯く姿に、初老の大臣はこれ見よがしにため息をついた。
「何をおっしゃるのです! ここは削れる経費で……」
「どう見ても必要経費だろう。ここを削っては明らかに、もしもの時の対応に不備が出る。国民からの不満も噴出するだろう。そんな単純なことをいちいち俺に言わせるのか?」
誰がどう見ても削れない必要経費の部分を、自分の機嫌で攻撃したい相手に管を巻く癖があるこの初老大臣は以前からうっとおしかった。
親父の代からいるというだけで、会議の場を自分の思うように進めようとすることがある。自分の権威を見せびらかしたいのだろうが、こっちから見れば何もわかっていない老いた害虫だ。初めは黙っていたが、それもそろそろ我慢の限界だった。
「王子殿下は何もわかっておられない! いつ起こるかわからない災害に……」
「俺が何もわかっていない?」
誰もが凍るような俺の低い声に、会議の場は静まり返る。初老の大臣も自分の失言に気が付いたのだろう。ハッとした顔になると一気に青ざめた。
「いや、その……」
「この俺が、何をどうわかっていないというのだ? 言ってみろ」
まるで氷の矢を放つような冷たい視線と言葉は誰もが青ざめて俯かせるには十分だった。言葉にするなら恐怖。畏怖。だが、そんなことにかまう時間などない。
「これ以上、くだらないことで会議の邪魔をするなら引退を進める」
「邪魔!? い、引退って……!」
目を丸くして顔を真っ赤にする初老の大臣に、俺は顔色一つ変えず冷めた目で見返す。目が合うと、初老大臣は一瞬怯んだ。小さく唇を戦慄かせている。しかし、自分のプライドがあるのだろう。最後の抵抗なのか、この俺にかみついてきた。
「国王陛下の時代からお支えしてきた私に引退など……!! いくらユアン王子殿下でも許されませんぞ!」
「許されない? 俺が?」
一段と低くなった俺の声に、会議の場が凍り付いた。ピリピリとした緊張が走る。それに気が付いていないのは、この初老の大臣だけだ。
「国王からすべての政は俺に一任されている。もちろん人事もだ。その俺が、誰に、どう許されないと申すのだ? 言ってみろ」
「そ、それは……」
誰もが底冷えするような俺の目に、やっと気が付いた初老の大臣はサッと顔色を変えた。だが、今さら遅い。
「まともな判断などできないやつは、政の足を引っ張るだけだ。そんなやつは俺の政治には必要ない。今までご苦労だったな。出口はあっちだ」
にべもなく言い放つ俺に、初老の大臣は口をパクパクさせたまま固まっている。
「どうした? 会議の邪魔になるとはっきり言わないと、それすらもわからないか?」
「クッ……!!」
初老の大臣は顔を真っ赤にして肩を震わせたまま、会議室を飛び出すように出て行った。
「奴の後任は人事大臣に任せる」
「しょ、承知いたしました」
人事大臣が頷くと、コーランがにっこり微笑んで言った。
「では、次の報告をお願いします」
「聞いている。さっさと続けろ」
会議室で、初老の大臣が俺にそう聞いてきた。俺は資料を見つめたまま、ため息をつきながら冷たくそう言い放つ。
つれない態度の俺に不満げな顔の大臣はそのまま話を続けた。その表情に俺の顔がますます冷めていく。そんな俺の顔色を、その大臣以外は戦々恐々と見つめていた。
初老の大臣はずっとどうでもいいことで、他の大臣に絡んでは困らせていた。
バカバカしい……。
これでは会議が進まない。俺はため息をつくと口を開いた。
「この金額には不備がない。何度読んでも間違った記載はないのだからもういいだろう。次」
いつまでもグダグダと、災害担当大臣に絡んでいる初老の大臣に低い声でそう言い捨てた。災害担当大臣は口をはさんだ俺の言葉に、どこかホッとしたように少し表情を和らげる。
しかし、俺と目が合うと気まずそうに俯く姿に、初老の大臣はこれ見よがしにため息をついた。
「何をおっしゃるのです! ここは削れる経費で……」
「どう見ても必要経費だろう。ここを削っては明らかに、もしもの時の対応に不備が出る。国民からの不満も噴出するだろう。そんな単純なことをいちいち俺に言わせるのか?」
誰がどう見ても削れない必要経費の部分を、自分の機嫌で攻撃したい相手に管を巻く癖があるこの初老大臣は以前からうっとおしかった。
親父の代からいるというだけで、会議の場を自分の思うように進めようとすることがある。自分の権威を見せびらかしたいのだろうが、こっちから見れば何もわかっていない老いた害虫だ。初めは黙っていたが、それもそろそろ我慢の限界だった。
「王子殿下は何もわかっておられない! いつ起こるかわからない災害に……」
「俺が何もわかっていない?」
誰もが凍るような俺の低い声に、会議の場は静まり返る。初老の大臣も自分の失言に気が付いたのだろう。ハッとした顔になると一気に青ざめた。
「いや、その……」
「この俺が、何をどうわかっていないというのだ? 言ってみろ」
まるで氷の矢を放つような冷たい視線と言葉は誰もが青ざめて俯かせるには十分だった。言葉にするなら恐怖。畏怖。だが、そんなことにかまう時間などない。
「これ以上、くだらないことで会議の邪魔をするなら引退を進める」
「邪魔!? い、引退って……!」
目を丸くして顔を真っ赤にする初老の大臣に、俺は顔色一つ変えず冷めた目で見返す。目が合うと、初老大臣は一瞬怯んだ。小さく唇を戦慄かせている。しかし、自分のプライドがあるのだろう。最後の抵抗なのか、この俺にかみついてきた。
「国王陛下の時代からお支えしてきた私に引退など……!! いくらユアン王子殿下でも許されませんぞ!」
「許されない? 俺が?」
一段と低くなった俺の声に、会議の場が凍り付いた。ピリピリとした緊張が走る。それに気が付いていないのは、この初老の大臣だけだ。
「国王からすべての政は俺に一任されている。もちろん人事もだ。その俺が、誰に、どう許されないと申すのだ? 言ってみろ」
「そ、それは……」
誰もが底冷えするような俺の目に、やっと気が付いた初老の大臣はサッと顔色を変えた。だが、今さら遅い。
「まともな判断などできないやつは、政の足を引っ張るだけだ。そんなやつは俺の政治には必要ない。今までご苦労だったな。出口はあっちだ」
にべもなく言い放つ俺に、初老の大臣は口をパクパクさせたまま固まっている。
「どうした? 会議の邪魔になるとはっきり言わないと、それすらもわからないか?」
「クッ……!!」
初老の大臣は顔を真っ赤にして肩を震わせたまま、会議室を飛び出すように出て行った。
「奴の後任は人事大臣に任せる」
「しょ、承知いたしました」
人事大臣が頷くと、コーランがにっこり微笑んで言った。
「では、次の報告をお願いします」



