「コーラン! 余計ことは言うなと言っているだろう」
テラスを離れ、執務室へ向かう途中。
俺はコーランを睨みつけるが、コーランはその視線をものともせずに可笑しそうに笑った。
「だって、ユアン様が素直じゃないからですよ」
「仕方がないだろう」
コーランがくすくす笑うのに反して、俺の機嫌は悪くなるばかりだ。
「でも、ジュアナ様は誤解されたんじゃないですか? 悲しそうに俯いてらっしゃいましたよ。どうするんですか? そのままにするんですか? 誤解は解いた方がよろしいですよ」
「……」
飄飄とそう言い放つコーランに、俺は憮然とするだけだ。
相変わらず、こいつは穏やかな顔してずけずけと物を言う。
コーランは俺に容赦がない。
コーランは俺より一回り上で、今年35歳。小さい頃からずっと側近として教育係として側にいたから俺にとっては兄のような、唯一本音で話せる一人だ。
だから、こうして二人きりの時はコーランも砕けた様子を見せる。
俺と言う人間をよくわかっているから言葉にも容赦はない。
「本当のご自分を見せてもよろしいんですよ? それを《咎める人》はもういないんですから……」
コーランの言葉に俺は足を止める。
「……無理だ。俺の中に植え付けられている。本当の自分など、今さらどう見せればいいのかわからない」
「ユアン様……」
そもそも、本当の自分とは何だろう?
自分が周りに何と言われているか知っている。
‘冷徹の王子’
その二つ名は、恐れから来ているということも。
使用人らや国民がどんな噂をしているのかも知っている。だが、今さらそれをどうにかしようとは思っていない。
この名があるから、不穏な動きを見せる北側諸国や他国をけん制できている。国王の代わりに、政だってうまくやれている。
本当の自分を見せたところで、今まで築き上げてきた全てが崩れてしまうのは賢明とは思えない。
だが……。
あいつを俯かせたくはない……。
テラスで俯いた彼女の姿が忘れられない。しかし、塗り固められた表面上の俺が邪魔をして、彼女とどう向き合っていいのか、どう話をしていいのかわからないのだ。
そんな俺の気持ちを見透かしたかのように、コーランは軽くため息をついた。
「せっかく時間を割いてランチタイムを設けているんですよ。もっと話をして親しくならないと、これから夫婦としてやっていけませんよ」
「わかっている。でも、どうしたらいいのかわからないんだ」
「言ってしまえばいいんですよ。このランチは俺が君のために作っているんだって。もっと親しくなりたいって」
目を丸くして顔を上げると、コーランはニヤニヤしながら俺を見ていた。
「そ、そんなこと言えるはずがないだろう!」
「言えばいいんですよ。食事マナーを苦手とする君が、気楽に食べられるようなメニューにあえてしているんだって」
「コ、コーラン!」
ずかずかと言うコーランに俺は焦りを見せ、思わず周りをきょろきょろ見渡す。幸い、誰もいなかった。こんな風に顔を赤くして動揺して焦る俺を部下や使用人らに見せるわけにはいかない。
俺はあくまで、冷徹の王子としてあり続けなければいけないのだ。
テラスを離れ、執務室へ向かう途中。
俺はコーランを睨みつけるが、コーランはその視線をものともせずに可笑しそうに笑った。
「だって、ユアン様が素直じゃないからですよ」
「仕方がないだろう」
コーランがくすくす笑うのに反して、俺の機嫌は悪くなるばかりだ。
「でも、ジュアナ様は誤解されたんじゃないですか? 悲しそうに俯いてらっしゃいましたよ。どうするんですか? そのままにするんですか? 誤解は解いた方がよろしいですよ」
「……」
飄飄とそう言い放つコーランに、俺は憮然とするだけだ。
相変わらず、こいつは穏やかな顔してずけずけと物を言う。
コーランは俺に容赦がない。
コーランは俺より一回り上で、今年35歳。小さい頃からずっと側近として教育係として側にいたから俺にとっては兄のような、唯一本音で話せる一人だ。
だから、こうして二人きりの時はコーランも砕けた様子を見せる。
俺と言う人間をよくわかっているから言葉にも容赦はない。
「本当のご自分を見せてもよろしいんですよ? それを《咎める人》はもういないんですから……」
コーランの言葉に俺は足を止める。
「……無理だ。俺の中に植え付けられている。本当の自分など、今さらどう見せればいいのかわからない」
「ユアン様……」
そもそも、本当の自分とは何だろう?
自分が周りに何と言われているか知っている。
‘冷徹の王子’
その二つ名は、恐れから来ているということも。
使用人らや国民がどんな噂をしているのかも知っている。だが、今さらそれをどうにかしようとは思っていない。
この名があるから、不穏な動きを見せる北側諸国や他国をけん制できている。国王の代わりに、政だってうまくやれている。
本当の自分を見せたところで、今まで築き上げてきた全てが崩れてしまうのは賢明とは思えない。
だが……。
あいつを俯かせたくはない……。
テラスで俯いた彼女の姿が忘れられない。しかし、塗り固められた表面上の俺が邪魔をして、彼女とどう向き合っていいのか、どう話をしていいのかわからないのだ。
そんな俺の気持ちを見透かしたかのように、コーランは軽くため息をついた。
「せっかく時間を割いてランチタイムを設けているんですよ。もっと話をして親しくならないと、これから夫婦としてやっていけませんよ」
「わかっている。でも、どうしたらいいのかわからないんだ」
「言ってしまえばいいんですよ。このランチは俺が君のために作っているんだって。もっと親しくなりたいって」
目を丸くして顔を上げると、コーランはニヤニヤしながら俺を見ていた。
「そ、そんなこと言えるはずがないだろう!」
「言えばいいんですよ。食事マナーを苦手とする君が、気楽に食べられるようなメニューにあえてしているんだって」
「コ、コーラン!」
ずかずかと言うコーランに俺は焦りを見せ、思わず周りをきょろきょろ見渡す。幸い、誰もいなかった。こんな風に顔を赤くして動揺して焦る俺を部下や使用人らに見せるわけにはいかない。
俺はあくまで、冷徹の王子としてあり続けなければいけないのだ。



