「いかがでしたか? ランチは」
ランチが終わって部屋に戻り、勉強のために書物を読んでいるとお茶を入れに来たリリーさんがそう声をかけてきた。
「だいぶ緊張なさっていたから、どうだったんだろうと心配していたんです」
気にしてくれたのかと、リリーさんの優しさに胸が熱くなる。
「ありがとうございます。思っていたほど、堅苦しい感じにもならずに落ち着いてランチが出来ました」
「それなら何よりです」
微笑みながら出された紅茶を一口飲むと、その美味しさにホッと息をつく。
「ユアン王子は冷徹の王子と呼ばれているので不安でしたが、気遣っていただけている感じがしましたし、心配するほどではなさそ……」
「ユアン王子様が気遣う!?」
私の声を遮って、リリーさんが驚愕の声を出した。
「……え?」
リリーさんは目を真ん丸くして固まった状態で私を見つめている。
あれ? 私、何か変なことでも言ったかしら?
キョトンとしていると、硬直から解けたリリーさんが「あぁ、申し訳ありません」と謝った。
「あまりにもあり得ないセリフを聞いたので、頭が追い付かなったようです」
ふぅっと息を吐くリリーさん。あり得ないセリフとは、いったいどういうことだろう。首を傾げていると、リリーさんは気まずそうに話した。
「あぁ、いえ……。王子様のご婚約者様には申し上げにくいことですが、ユアン王子様はお噂通りのお方です。冷徹の王子様という言葉がぴったりなほどに」
「え? そうなんですか?」
まぁ確かにあの冷たい目を見ればそう思う。でも、今日のランチのユアン王子には少しばかり思いやりを感じたのだが……。
気のせいだったのかな?
「思いやり、気遣いなんて一番縁遠い言葉じゃないでしょうか」
まるで私の考えを読んだかのようなセリフだ。
「戦いに対しての戦略が無慈悲で、冷徹の王子と別名が付いたのはご存じですよね。それはこの城の者に対しても同様です。挨拶しても視線すら向けませんし、そもそも使用人と口を利いたことはないのではないかと思います。ユアン王子様が国王陛下の代わりに政を取り仕切っておられるのはご存じですよね? その朝議の場はいつも張りつめているそうですよ。不用意な一言をいうと、あの冷たい目を向けられて、その視線にみんな真っ青になるそうです」
リリーさんはここまで一気に話すと、はぁぁと一息をついた。
「ユアン王子様と親しく口が利けるのは、コーラン様など一部の側近だけだそうです。実質、コーラン様がユアン王子様と他の者の橋渡しとなっているのですよ」
そう聞いて、コーラン様が言っていたことを思いだした。
"私がお二人の橋渡し的な存在に"
そんなことを話していた。聞いた限り、コーラン様はどこでもそういった役割なのだろう。
「でも、今日のランチでユアン王子は一瞬微笑まれましたよ?」
「微笑む!? 王子様が!?」
私の言葉に被せる様に、再びリリーさんは目を丸くして驚愕する。
なんだかおもしろいわ、この人。
リリーさんの反応が可笑しくなってくる。私がリリーさんの反応を密かに楽しんでいる間も彼女は驚きで固まっていた。
「あり得ないです。王子様が微笑むなんて……」
「そうなんですか?」
「はい。王子様は笑顔を母親の胎内に忘れてきたのではないかと言われているほどで……。笑顔なんてみたことがある者などおりませんよ。本当に見たのですか? 見間違いでは? 緊張しすぎて脳が補正をかけたとか……」
幻覚でも見たのではないかという反応に私の方が戸惑う。緊張はしていたが、さすがに補正まではかけない。
そうは言っても、実際見たからねぇ……。口角が上がるところ。ユアン王子も気まずそうにしたし……。
思わず出た笑顔だったから、気まずそうにしたのだろうか。笑顔も素敵だった。もっと笑ってもいいのに。
「では、私は貴重な物を見たということですね」
そう結論づけるが、リリーさんはまだ怪しんでいた。
ランチが終わって部屋に戻り、勉強のために書物を読んでいるとお茶を入れに来たリリーさんがそう声をかけてきた。
「だいぶ緊張なさっていたから、どうだったんだろうと心配していたんです」
気にしてくれたのかと、リリーさんの優しさに胸が熱くなる。
「ありがとうございます。思っていたほど、堅苦しい感じにもならずに落ち着いてランチが出来ました」
「それなら何よりです」
微笑みながら出された紅茶を一口飲むと、その美味しさにホッと息をつく。
「ユアン王子は冷徹の王子と呼ばれているので不安でしたが、気遣っていただけている感じがしましたし、心配するほどではなさそ……」
「ユアン王子様が気遣う!?」
私の声を遮って、リリーさんが驚愕の声を出した。
「……え?」
リリーさんは目を真ん丸くして固まった状態で私を見つめている。
あれ? 私、何か変なことでも言ったかしら?
キョトンとしていると、硬直から解けたリリーさんが「あぁ、申し訳ありません」と謝った。
「あまりにもあり得ないセリフを聞いたので、頭が追い付かなったようです」
ふぅっと息を吐くリリーさん。あり得ないセリフとは、いったいどういうことだろう。首を傾げていると、リリーさんは気まずそうに話した。
「あぁ、いえ……。王子様のご婚約者様には申し上げにくいことですが、ユアン王子様はお噂通りのお方です。冷徹の王子様という言葉がぴったりなほどに」
「え? そうなんですか?」
まぁ確かにあの冷たい目を見ればそう思う。でも、今日のランチのユアン王子には少しばかり思いやりを感じたのだが……。
気のせいだったのかな?
「思いやり、気遣いなんて一番縁遠い言葉じゃないでしょうか」
まるで私の考えを読んだかのようなセリフだ。
「戦いに対しての戦略が無慈悲で、冷徹の王子と別名が付いたのはご存じですよね。それはこの城の者に対しても同様です。挨拶しても視線すら向けませんし、そもそも使用人と口を利いたことはないのではないかと思います。ユアン王子様が国王陛下の代わりに政を取り仕切っておられるのはご存じですよね? その朝議の場はいつも張りつめているそうですよ。不用意な一言をいうと、あの冷たい目を向けられて、その視線にみんな真っ青になるそうです」
リリーさんはここまで一気に話すと、はぁぁと一息をついた。
「ユアン王子様と親しく口が利けるのは、コーラン様など一部の側近だけだそうです。実質、コーラン様がユアン王子様と他の者の橋渡しとなっているのですよ」
そう聞いて、コーラン様が言っていたことを思いだした。
"私がお二人の橋渡し的な存在に"
そんなことを話していた。聞いた限り、コーラン様はどこでもそういった役割なのだろう。
「でも、今日のランチでユアン王子は一瞬微笑まれましたよ?」
「微笑む!? 王子様が!?」
私の言葉に被せる様に、再びリリーさんは目を丸くして驚愕する。
なんだかおもしろいわ、この人。
リリーさんの反応が可笑しくなってくる。私がリリーさんの反応を密かに楽しんでいる間も彼女は驚きで固まっていた。
「あり得ないです。王子様が微笑むなんて……」
「そうなんですか?」
「はい。王子様は笑顔を母親の胎内に忘れてきたのではないかと言われているほどで……。笑顔なんてみたことがある者などおりませんよ。本当に見たのですか? 見間違いでは? 緊張しすぎて脳が補正をかけたとか……」
幻覚でも見たのではないかという反応に私の方が戸惑う。緊張はしていたが、さすがに補正まではかけない。
そうは言っても、実際見たからねぇ……。口角が上がるところ。ユアン王子も気まずそうにしたし……。
思わず出た笑顔だったから、気まずそうにしたのだろうか。笑顔も素敵だった。もっと笑ってもいいのに。
「では、私は貴重な物を見たということですね」
そう結論づけるが、リリーさんはまだ怪しんでいた。



