お嬢様の代わりに冷徹王子に嫁ぎます

「いやぁ、すっかり伝えるのを忘れていました。すみません」

昼食時間に私を迎えに来たコーラン様は、全く悪びれる様子もなく笑いながら謝罪した。

「コーラン様……」

私はがっくりと肩を落とす。

正直、腹ただしさも感じたが、この垂れ目がさらに申し訳なさそうに垂れるところを見ると強く言えない自分がいた。職務は違うが、使用人の立場として伝え忘れるというのは本来あってはならない。けれど、私たちも人間だ。全くないとは言い切れない。

私も同じような経験があったなぁ。あの時はお嬢様にこっぴどく叱られたっけ。

忘れていたとしても、実は全く支障のない出来事だった。しかしジュアナお嬢様は烈火のごとく怒り、その日は一日食事抜きにまでされた。

あの時は辛かったなぁ。だからコーラン様を責めることはできないんだよね。自分の経験から、仕方がないと諦め肩をすくめた。

「急なことでとても緊張しています。マナーや作法を間違えてしまうかも……」

事前にそう話して予防線を張る。すると、コーラン様は微笑みながら大丈夫だと首を振った。

「だと思いまして、そういったものを気にしなくてもよいランチタイムとなっております」

さぁ、と連れてこられた場所は、王宮の中庭が見えるテラスだった。大きなパラソルとテーブル、椅子が並んでいる。そしてそこには……。

「サンドウィッチ?」
「ええ。気軽に食べられるように、このような形式にしてみました。いかがですか?」

テーブルに置かれた籠の中身はサンドウィッチや卵焼き、ソーセージやカップ野菜などどれもフォークひとつで簡単に食べられるものばかりだ。
まるで、学生の時にお嬢様に付き添って行ったピクニックのようだと思った。

これなら気にしなくても食べやすい!

「可愛らしいです。これなら緊張していても気軽に食べられそう!」

マナーなど気にしなくてよいので心から安堵した。

「それなら良かったな」

不意に後ろから、コーラン様ではない低い声がして反射的に振り返る。