まあ、そうだよな。俺もわかってたよ。
だって北高に志望校を変えるなら、そんな目の下にクマ作るまで受験勉強をする必要なんてないもんな。
昔から、那月は手を抜けない奴なんだ。この計算問題が解けるようになったら、次はもっと難しい問題を。1秒タイムが縮まったら、更にもう1秒。そうやって常に上へ上へと目指していた。そういう那月を見ていると、負けてらんないなと俺も頑張れた。
俺の幼なじみは、誰より努力家で、ものすごく眩しい存在なのだ。
「けど……」
しだれ柳が夜空に輝く。流れ星のように火花が落ちていく。
「南高行っても、もう走らないかもしれない」
そう呟いた那月の横顔は、叱られる前にする表情とよく似ていた。
走らない那月。俺は上手く想像できなかったが、何でと問い詰める気にもならなかった。



