サヨナラを言う準備は出来ていた。

残り火がパラパラと音を立てて落ちていく中、那月が信じられないといった様子で口を開く。


「どうして、結星がいるの?」


どうしてって、そりゃいるだろう。
花火は毎年、家のベランダで見るって決まってるんだから。お前だっているじゃん、ここに。
俺たちの間じゃ、暗黙の了解ってやつだろう?

わざわざ口にはしなかったけど、そんな俺の視線に、ポカンとしていた那月は瞳を揺らした。
続けてふたつ、花火が高く打ちあがる。


「……去年は、サッカー部の後輩マネとお祭りに行ったくせに」


拗ねたように言うと、那月は花火に向かってぷいと顔を背けた。

後輩マネ? 誰のことだ?
そういえば、夏祭りに行きませんかと最初に声をかけてきたのは、サッカー部の新人マネージャーだった。少し前までは小学生だった彼女は小さくて初々しくて、俺も去年はこんな感じだったのかねと思いながらOKしたんだった。