サヨナラを言う準備は出来ていた。


華やかで、賑やかで、あっという間に過ぎていく十分間。
悲しいほどに短い。伝えたいことがたくさんあったはずなのに、何も伝えられていない。あれもこれも、全てを伝えるには短すぎる。

それなのに、那月を前にするとダメなんだ。
伝えたかったことが、全部軽くなって宙に浮いてしまう。大したことじゃないと、こうして顔を突き合わせているだけで、何だか充分満ち足りている気になってしまう。

これまで打ち上げられた全ての花火が、一斉に夜空に咲いた。
祭りの夜が終わる。これだけは伝えておかなきゃ。
ごめんな。お前の誕生日なのに、今日は何も用意していない。

毎年那月の誕生日に行われる夏祭りで、俺は射的で獲った景品をプレゼントしていた。それが恒例だった。
でも今年は祭りには行っていないから、手ぶらでごめん。


「……何、その顔? もしかして、プレゼントのこと気にしてる? いいよ、別に。おサルの貯金箱とかもらっても困るし」


それは小三のときのプレゼントだな。
あのとき喜んでくれたのは、演技だったのか。まあ、それはそうか。
去年のはもうちょいまともな奴だったんだけど、失くしちゃって渡せないままだ。