彼らの夏が終わる

 第二クオーター、第三クオーターも同様の展開が続いたが、一輝たちがやや優勢だった。


「つっても、点差は十点もないからなあ」


 第三クオーターを終え、汗だくの一輝がスコアボードを睨んだ。

 体育館の窓も扉もすべて開け放たれていたが、風はほとんどなく、蒸した空気の中で全員が汗まみれになっていた。


「相手の応援の女の子たちの態度に普通に傷つく……」


 翔は肩を落としてうなだれた。


「そういうもんだとは分かってるけどさ……あ、柳だ」


 翔のスマホに幼馴染みからメッセージが届いていた。翔は画面を見ると少し笑い、スマホを鞄へ投げ込んだ。


「ま、次でどうあれ終わりだし」


 立ち上がる翔に、海斗が続いた。


「それはそう。あーあ、かわいい女の子に応援されてえな」


 ふと海斗が固まった。


「どした?」


 続いて立ち上がった藤也が声をかけると、海斗は眉間にしわを寄せ、相手チームのベンチ上にあるキャットウォークを睨んでいた。つられて藤也が視線を向けると、キャットウォークで私服姿の女性が手を振っていた。


「知り合い?」

「……姉」

「あね! へー、似てる? そうでもない……?」

「知らねえよ……ていうかなんでいるんだよ……」


 海斗は顔を引きつらせながらも、小さく手を振り返した。

 藤也は妹たちの姿を探して体育館を見回したが、どこにも見当たらなかった。


「藤也も言えば来てくれたんじゃないの?」


 メイサが言うと、藤也は目を細めた。


「いや、いいよ。あいつら受験生だし。……あいつら呼ぶと、おまけもついてくるし」


 メイサは「おまけ」がパパさんママさんなのか、それとも藤也の従妹なのか考え、たぶん両方だろうと小さく笑った。


「さ、そろそろ時間だ」


 灰田が静かに言った。一輝と大雅も、それを聞いて立ち上がった。


「泣いても笑っても、最終クオーターだ。行っておいで。そして、戦っておいで」

「灰田先生も、ちゃんと顧問なんすね」


 大雅が肩をすくめる。灰田はふっと笑ってコートを見回した。


「そうだよ。実はね」


 メイサは愛香と目配せを交わし、撮影と記録を続けた。

***

 第四クオーターは、それまでとは比べものにならないほど激しかった。

 大雅が投げたボールを藤也が受け、ゴールへ飛び込もうとした瞬間、相手にカットされた。


「ざけんな、レッドカード出せ!」


 藤也が床へ叩きつけられ、メイサの声が体育館に響いた。


「ちょ、メイちゃん、バスケにレッドカードないから!」

「海斗、カバー! 須藤、立てるか!?」

「っす!」


 一輝の声に、藤也が立ち上がる。

 メイサは唇を噛み締め、それでも撮影と記録の手を止めなかった。


「大雅!」

「おうよ! っ、」


 大雅は再び相手とぶつかったが、今度は踏みとどまった。しかし、あと一歩届かず、得点を許す。

 一輝がボールを受け、翔に投げた。翔は素早く走り、相手のカットを躱す。

 ボールは海斗、大雅へと渡る。しかし、大雅には二人が張りつき、攻め手を失ってしまう。


「大雅、一歩下がって!」


 愛香が叫んだ。大雅ははっとして半歩下がり、一輝へパスを送る。一輝はそのままゴールを決めたが、相手もすぐに得点を返してきた。

 じわじわと点差が縮まり、体育館を包む熱気はさらに増していった。


 そして、終了の笛が鳴り響く。