彼らの夏が終わる

「よろしくお願いします!」


 試合が始まる。

 高く放られたボールを大雅が素早く奪い、前方へぶん投げた。藤也はそれを受けると、その勢いのままゴールへ叩き込んだ。

 その瞬間、応援席から女子生徒たちの大きなため息が一斉に漏れた。

 相手がボールを動かすと、海斗は横から奪おうとして相手と激しくぶつかり、そのまま床へ叩きつけられた。それでもすぐに起き上がり、視線だけはボールを追い続ける。


「翔、大雅!」


 一輝が怒鳴る。

 二人はボールを持つ選手についたものの突破され、そのまま得点を許す。一輝はすぐにボールを受け取って前へぶん投げる。海斗が受け、大雅へパスをつなぎ、大雅がそのままゴールを決めた。

 第一クオーターは互いに譲らぬ攻防が続き、同点のまま終了した。


「きっつ! きっつ!!」


 ベンチへ戻った大雅は、肩で大きく息をしながらぐったりと腰を下ろした。


「いやマジ、分かってたけどさ!? なにあの体格。高校生だよな?」


 メイサは汗だくの大雅の頭へタオルを掛けながら答えた。


「藤也に筋肉つけたらあんな感じ」

「たしかに……」

「えー嫌だ……」


 ぼやく藤也に、メイサは思わず笑みをこぼした。


「藤也の伯父さん、あんな感じじゃん」

「そうだけどさあ。俺の顔だと似合わないだろ」

「それはそう。黒杉、ブロック役いけそ?」


 一輝はドリンクを飲みながら相手ベンチへ目を向けた。並ぶ選手たちは、誰もが一輝と同じか、それ以上に厚い体つきをしている。


「やるだけやる」

「よろしく。白石は踏ん張って。青川(あおかわ)茶野(ちゃの)は走れ。一瞬たりとも止まるな。走り続けて」

「っす」

「りょ」

「メイサ、俺は?」

「三枝先輩とお呼び。ゴール下でぽこすか点数を稼ぐ係」

「ぽこすか……」


 藤也はぴょんと立ち上がった。

 メイサは目を細め、藤也を見上げた。


「相手と無理に接触しないよう気をつけて。須藤の筋肉じゃ押し負けるから。それに、あんたに怪我なんてさせたら、パパさんママさんに申し訳が立たないしね」

「気にしなくていいけど」

「そういうことを気にするのは、顧問の僕の役目だ」


 灰田が口を挟んだ。


「それに須藤も男の子だからさ。あんまり甘やかしちゃダメだって言ったろ」

「う、そうですけど……」


 メイサは真っすぐ藤也を見上げた。


「須藤、ぶちかましてきて」

「あいあい、ハニー。任せとけ」

「ちょ、三枝さん、それ、俺にも言って」


 ベンチに座ったまま乗りだした大雅にメイサは同じように真顔を向けた。


「白石は接触してもいいけど押し負けないで。私が何か月あんたの筋肉育てたと思ってんの」

「せいぜい一月半だけど!? でも期待には応えてやんよ」


 大雅は立ち上がると、大きく伸びをした。

 ドリンクを回収した愛香が全員を見回す。


「みんな、いってらっしゃい」

 第二クオーターが始まる。

***