彼らの夏が終わる

 メイサと藤也が視聴覚室に着くと、海斗と(しょう)がちょうど昼食を終えたところだった。


「ちーす」

「うーす」

「よーす」


 二年生三人が適当に挨拶を交わすのを横目に、メイサはいつもの一番後ろの席へ腰を下ろし、ノートとシャーペンを取り出した。


「ところで、なんで飯食いながら観戦じゃないんすか?」


 翔が振り向いた。


「私とまなちゃんが食べられなくなるから」

「なんでです?」

「見てればわかるよ」


 やがて愛香、一輝、大雅の三人もやってきて、愛香がプロジェクターを起動した。
 愛香はメイサの隣に腰を下ろし、メイサと同じようにノートとシャーペンを用意した。

 そして試合が始まった。


「一番、速くはないけど手堅いね」

「五番、右へ逸れる癖がある?」

「二十三番ジャンプ高いな」

「この監督、引かないねえ」

「攻めていくけど、十番のフォロー頼りがちだね」

「十番フェイントうまいな」

「五番、カットうまいね」


 メイサと愛香は瞬きも惜しむように呟きながら、シャーペンを絶え間なくノートの上へ走らせていた。


「いや、うるさ」


 大雅が振り向いたが、一輝に蹴られてまた前を向く。

 二時間近い試合のあいだ、メイサと愛香はその調子で分析を口にし続け、ノートを埋めていった。


「いや、うるさいっしょ」


 観戦終了後、大雅は改めて振り向いた。


「お黙り」


 メイサがじろっと大雅を見る。

 愛香は自分とメイサのノートを見比べ、小さく頷いた。


「そういうわけで、相手は体格のいい選手が多いから、みんなは足を使って、踏ん張り負けしないよう頑張ろう」

「なにが『そういうわけ』なのかちっともわかんなかったっすよ」

「いやまあ、たしかにみんなデカかったですけど」


 海斗と翔が困惑の声を上げる。

 ふとメイサがノートから顔を上げた。


「別件だけど、明日の部長会の話した?」

「今する」


 一輝が真顔で海斗と翔を見た。


「明日、新部長顔合わせのための部長会あるから、海斗と翔、行ってこい。部長副部長はどっちでもいい」

「すみません、もうちょい詳しく」

「情報が足りてないっす。なんて??」


 一輝と大雅が海斗と翔に部長会について説明を始めると、メイサは愛香とともに二回戦までの練習メニューを考え始めた。

 藤也は手持ち無沙汰そうに、メイサの手元を眺めていた。


「藤也ー、藤也も明日の部長会行く?」


 海斗が振り返った。


「行く。二組の(やなぎ)と一年の藍葉(あいば)連れて行く」

「まじか。園芸部、人数多いもんな。バスケ部は俺とこいつだけ」

「少数精鋭ってことだよ。ま、でも柳もいるならいいか」

「物は言い様だな……」


 部長会の説明が終わるころには、マネージャー二人も練習メニューを組み終えていた。男子五人は部室へ向かい、メイサと愛香は体育館の更衣室でそれぞれ着替え、舞台前で合流した。


「朝練は今までどおりストレッチと筋トレ、余裕があればランニング。午後はストレッチのあと、シャトルランとスリーメン、それからファイブメンをメインにやってくよ」

「走れってこと?」

「そう。がんがんいこうね」


 メイサの言葉に大雅はニヤリと笑い、軽くその場で跳ねた。

 一輝も屈伸を始め、二年生三人も軽く体をほぐしながら、メイサと愛香の準備が整うのを待った。