彼らの夏が終わる

「うんうん、いい動きじゃん」


 数時間後。メイサは体育館の隅でノートを片手に頷いた。

 愛香もノートにメモを取りながら小さく頷いている。

 愛香がホイッスルを吹くと、全組み合わせの2on2を終えた男子四人が汗だくのまま床へ倒れ込んだ。


「あっつう!」

「もー、無理、動けない」


 メイサは素早く四人へドリンクを手渡した。

 海斗と翔は無言で口をつけ、一輝と大雅は浴びるように飲んでいた。

 愛香がメイサの手元のノートを覗き込んだ。


「みんな、いい感じだねえ」

「ね。これで、ストレッチの有用性をご理解いただいたかな」

「理解しました!」


 海斗がぴょんと立ち上がった。


「体が明らかに軽いんすよ」

「わかる」


 翔も同じように立ち上がると、その場で軽々とバク転を決めた。

 メイサと愛香は目を丸くする。


「え、すごい」

「それ、予備動作なしでできるもん?」

「前は出来なかったんすけど、最近、体が軽くて出来るようになりました!」


 翔は片足を軸にくるりと回ると、その勢いのまま側転を決めた。


「すごい、体操部がほしがりそう」

「うちの体操部強豪だから、これくらい全員できますよ、たぶん」


 最後に軽やかに前転を決めると、翔は満足そうに笑った。


「次、何するんですか?」

「んー、そろそろ須藤が来るから、アウトナンバーして、外が涼しければランニング、暑ければファイブメンかな。……あ、来た」

「遅くなりましたー」


 体操着姿の藤也が走ってきた。


「お疲れ。頭に草ついてるよ」


 メイサは笑いながら、藤也の髪に絡んだ枯れ草を摘み取った。


「あ、だからか」

「なに?」


 藤也が苦笑した。


「草野先輩が、俺の髪を見て『やっぱやめとく』って言ってた」

「む、むかつく! なにあいつ、その余裕な感じむかつく!」


 そう言いながらも、メイサは笑って藤也の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。

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