彼らの夏が終わる

 ある夜、メイサは自宅の勉強机に向かったまま、大きく肩を落としていた。


「やることが、多い!!」

「期末前だからなあ」


 スタンドに立てかけたスマホの画面越しに、藤也(とうや)が手元の参考書へ視線を落としたまま答えた。


「でも、メイサはこの試験の結果で大学の推薦もらえるか決まるだろ?」

「そうなんだよ」


 メイサは背筋を伸ばし、机の上のシャーペンを握り直した。


「あのさ、数学なんだけどさ」

「はいはい、どのあたり?」


 藤也は机の端に積まれた参考書の中から、数学の参考書を引き抜いた。

 どうして二年生の藤也が三年生の範囲まで当たり前のように答えられるのか、メイサは今さら尋ねたこともなかった。自分のために予習をしてくれていることは、付き合う前から変わらない。


「あと三十分くらいしたら、いったん休憩してストレッチしようね」

「了解、ハニー。試験前の部活禁止期間、いつからだっけ」

「来週。それまでに家でやっておいてほしい筋トレとストレッチもまとめてバスケ部のグループトークに流しておく」

「無理すんなよ」

「ありがと、ダーリン。ところで、この問題なんですけど」

「はいはい」


 メイサは数学のプリントを持ち上げ、スマホのカメラへ映るよう角度を調整した。

 画面の向こうで、藤也がメガネ越しに目を細めながら問題を読み取ろうとしているのを見て、メイサの口元は思わずほころんだ。

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