彼らの夏が終わる

「ありがとうございました!!」


 一輝たちはコートに向かって深く頭を下げると、汗をにじませたままベンチへ戻ってきた。


「おかえり!」

「おう、ただいま」


 一輝がふにゃっと笑って、愛香の髪をかき混ぜた。


「お疲れさま、みんな」


 灰田はほっとした表情で、部員たちをゆっくりと見回した。


「一回戦突破、おめでとう。君たちがここまで成長してくれて、本当に嬉しい。でも同時に、僕は何もできていなくて、本当にふがいないです……」

「ちょ、先生、泣くなって!」


 大雅が笑って顧問の背中を叩いた。


「俺たちの戦いはこれからだぜ!」

白石(しらいし)先輩、それじゃ打ち切りですよ」

「縁起でもない」


 海斗がぎょっとして、翔も苦笑した。


「あー、疲れた」


 藤也がベンチへどさりと腰を下ろすと、海斗と翔もその隣へ並んで座る。

 メイサは三人にタオルとドリンクを渡した。


「お疲れさま。よくできました」

「ありがと、褒めて」

「かっこよかった!」

「だろ!!」

「そっち二人もね。よくできました」


 メイサは海斗と翔の頭を、タオル越しにわしゃわしゃと撫でた。

 一瞬だけ藤也がつまらなそうな顔をしたが、メイサが「あとで」と口を動かすと、藤也はすぐににやりと笑った。

 隣のベンチで、一輝と大雅も並んで座り込んでいた。


「あー、疲れた。でも勝てた」


 大雅は喉を鳴らしながら、ドリンクを一気に飲み干した。

 愛香がお代わりを渡す。


「一輝もお代わりいる?」

「あ、うん。もらう」

「どうぞ。……どうしたの?」


 コートをぼんやりと見つめる一輝に、愛香は不思議そうに首をかしげた。


「ギリギリだったって。あー、いや、悪いなんでもない」

「何でもなくないよ」


 愛香は真剣な表情で、一輝の顔を覗き込んだ。


「後で、いや明日でいいけど試合の動画見直そう。良かったこと、ダメだったこと、直さないといけないこと、全部洗い出すよ」


 一輝がぽかんとして愛香を見返した。


「……そうだな」

「なあに?」

「いや……俺、お前のこと……あーうん。また今度」

「うん?」


 一輝は頭にかぶっていたタオルを手に取り、顔を覆うように拭った。

 そうしないと、いろいろ漏れそうだった。