彼らの夏が終わる

 地区大会一回戦の朝。早くも太陽が照りつける待ち合わせの駅で、メイサは呆れた顔で他の部員たちを見渡していた。


「だいじょぶ?」

「だめ」


 愛香(まなか)が顔をしかめて答えた。

 隣に立っている大雅(たいが)が情けない顔をメイサに向ける。


「あの、三枝(さえぐさ)さん、よしよししてください」

「よしよ、」

「させませんけど!?」


 泣き言をこぼす大雅に、メイサは手を上げかけたが、藤也(とうや)が素早く間に割って入った。


「ウケる。藤也はそれだけ動けるならばっちりだね」

「任せとけ!」

「俺はもうだめ」


 うなだれる大雅を愛香が覗き込んだ。


「よしよし、いる?」

「めちゃくちゃしてほしいけど、部長に刺されたくないから遠慮しとくわ。って、一輝(かずき)?」


 一輝は顔をしかめたまま、ぼんやりと遠くを見ていた。


「一輝、おい、一輝!」

「ん、なに、うるせえけど」

「大丈夫?」

「全然問題なし。行こうぜ」


 一輝は少しだけ笑みを浮かべると、海斗(かいと)(しょう)にも声をかけ、試合が開催される学校へ向かって歩き出す。


 愛香と大雅も顔を見合わせ、小さくうなずき合ってからその後を追った。


「おはよう、みんな。元気? 僕は久しぶりの公式戦に胃が痛いよ」


 相手校の校門前では、顧問の灰田(はいだ)が胃のあたりをさすりながら、落ち着かない様子で待っていた。


「いや、一番なんにもしてない人が、なんで一番しんどそうなんですか」


 海斗は驚いたように顧問を見た。


「傷つくなあ。好きで何もしてないわけじゃないし。公式戦の申し込みとか、練習試合の手配とかしたでしょうが」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ。サッカー部の顧問の先生に教わりながら、僕がやりました。……ともかく」

 灰田はそう言って笑った。


「一回戦だ。初戦だ。僕らのスタートラインだ。なんにせよ、走り出さなきゃゴールは目指せない」

「……行こう」


 一輝が歩き出すと、他の部員たちもその後についていく。メイサが最後を歩こうとすると、灰田が並んだ。


「ありがとう、三枝さん。彼らの背中を押してくれて」


 メイサは首を横に振った。


「私は声をかけただけです。あいつらはずっと自分たちで走ってました」

「素晴らしいマネージャーだよ、きみは」

「内申の加点お願いします」

「僕、一年生の体育担当だからなあ」


 メイサがわざとらしく肩を竦めると、前を歩いていた藤也が大きく手を振った。


「メイサ! 行こうぜ!」

「はいよー」


 メイサは手を振り返すと、灰田に頭を下げ、藤也のもとへ駆け寄った。

***