彼らの夏が終わる

「……疲れた」


 動画が終わり、愛香が再生を止めると、一輝はそのまま机へ突っ伏した。

 画面を見続けていたせいで目の奥がじんと痛み、思っていた以上に神経を使っていたことを実感した。


「一輝、どうしたの?」


 愛香は不思議そうに首をかしげ、一輝の顔を覗き込んだ。


「んー……俺より、愛香のほうがずっと真剣にバスケしてたわ」

「気づくのが遅い!」


 メイサが低い声で言った。


「まあ、どうでもいいんだけど」


 そう言い残すと、メイサは立ち上がり、ノートとボールペンをカバンへ放り込んだ。藤也もそれに続いて立ち上がり、カバンを背負う。


「俺、園芸部に顔出して帰ります」

「私はバイト行く。また月曜日の朝ね」


 二人が出ていくと、海斗(かいと)(しょう)が振り向いた。


「俺らはちょっと走ってきます。なんか駅の向こうの公園にバスケできる場所できたらしくて」

「練習ってほどじゃなくても、もうちょい体動かしたいんで行ってきます」

「いってらっしゃい。前後でストレッチだけちゃんとやってね」


 愛香が笑顔で手を振ると、海斗と翔も手を振り返し、そのまま視聴覚室をあとにした。


「二人はどうするの?」

「愛香は?」


 一輝はすぐに聞き返した。


「特に決めてないけど」

「じゃあ、今までの練習試合の動画、もう一回見せてくれ」


 愛香がうなずいてスマホを取り出すと、大雅も一輝の隣へ座り直した。


「俺も見ていこうかな。悪いな、邪魔して」

「そういうんじゃねえから。大雅がどう見てるかも知りたいし、みっちり付き合え」

「帰ればよかった!」


 愛香はスマホを視聴覚室のプロジェクターにつなぎ、映像を映し出すと、二人の隣へ座り直した。静かな視聴覚室にはプロジェクターの作動音だけが小さく響いている。


「まずは先月、大学生と試合したときの動画ね。解説いる?」

「カンニングじゃん?」

「今はテスト中じゃなくて復習中だから。バスケはみんなでやるスポーツだよ」

「……そうだったわ」


 愛香の笑顔を見て、一輝は気まずそうに口をつぐんだ。

 一輝は姿勢を正し、改めて前方のスクリーンへ視線を向ける。

「まずは大雅が先制したんだよね。一輝は初めてポイントガードだったから、結構下がって様子を見てたけど、もうちょい前に出てもよかったかな。まあ海斗くんと翔くんも結構上がってたから全体を見るって意味では下がってもよかったけど、いざってときにパスを受けにくいからね。須藤くんはまだ動きが固い」


 一輝は相槌も打たず、愛香の説明にじっと耳を傾けていた。

 隣では大雅も黙ったまま画面を見つめ、愛香の言葉を一つひとつ確かめるように聞いている。

***